『チーム・ジャーニー』の3つの問いでチームビルディングをやってみた

はじめに

こんにちは。スピーダ事業Product Teamの中嶋です。

以前の記事で1週間ごとにチームのふりかえりをしていると書きました。

tech.uzabase.com

ふりかえりのファシリテーターは、基本的にはチームの外から呼んできます。

今回、私は別のチームから依頼された側でしたが、状況から考えると「ふりかえりよりも先に、チームビルディングをやったほうが良いのでは?」と思い、実際にチームビルディングのファシリをしたので、そのときの話を書こうと思います。

いつもどおりのふりかえりファシリ依頼

ファシリ依頼は専用の管理アプリから飛んできます

あるチームから、ふりかえりのファシリテーションをしてほしいという依頼を受けました。

自分のチーム以外のふりかえりをファシリテーションすること自体は四半期に3回ほどはあることなので、いつもどおりの依頼だと考えていました。

チーム始動直後という、いつもと違うタイミング

ただ、今回の依頼にはひとつ、いつもと違う点がありました。それは依頼されたタイミングです。

Product Teamには、四半期ごとにチームメンバーを少しずつ入れ替えていく「チームシャッフル」という仕組みがあります。

今回のファシリ依頼は、ちょうどこのチームシャッフルが終わった直後でした。つまり、メンバーが入れ替わったばかりのタイミングです。

加えて、私たちは360°FBを取り入れているのですが、そのFB面談の時期とも重なっており、チーム全員が揃って開発している時間そのものが少ない状況でもありました。

何かしらふりかえりをすればエピソードは出てアクションを立てることはできると思います。

ただ、今までの経験的に、始動したばかりのチームでふりかえりをやると、ふりかえる対象となる活動そのものがまだ少ないため、集まる情報量が少ないことが多いです。付箋がなかなか出てこず、出てきたテーマも深掘りするほどの厚みがない、ということが起こりがちです。

まだチームメンバーが入れ替わって一週間も経っていないのであれば、まずはお互いを知る、このチームが何をやるのかの理解を深める場を設けた方が良いのではないかと思い、チームビルディングの提案をしてみました。

チームビルディングで何をやるか

次に悩むのが、チームビルディングの時間で何をやるかです。

こういうのでよく挙げられるのが、ドラッカー風エクササイズ*1。または、バリューズカードを使って、ゲーム感覚でメンバーの価値観を表明し合うとかがあります。

個人的にはドラッカー風エクササイズはみんなよくやっていて慣れているので良いかなと思いました。

ですが、ドラッカー風エクササイズはあくまで個人が出発点となった質問が多く、チームとしてどうあるべきか、という質問がもう少し欲しいなと思いました。あと正直飽きた。

ちょっとだけ悩んだり書籍を読んだりしてみて、今回は『チーム・ジャーニー』*2という書籍で紹介されている「出発のための3つの問い」(以下「3つの問い」)をやってみることにしました。

『チーム・ジャーニー』の「出発のための3つの問い」

書籍を読んだことがある人はご存知かと思いますが、以下の3つの問いに答えるというシンプルなものです。

  1. 私たちは何をする者たちなのか(チームとしてのWhy)
  2. そのために何を大事にするのか(チームとしてのHow)
  3. 自分はなぜここにいるのか(個人としてのWhy)

順番が重要で、まずチームのWhy、次にHowを考え、最後に個人のWhyを考える順番となっています。*3

チームとしての目的にむきなおり、目的を達成するために何を大事にするのか、それが個人のWhyとどう影響するのかという流れがあるので、自然とメンバー個人のWillをチームの目的にアラインできるようなワークの設計になっているのがとても良い感じです。

進め方

『チーム・ジャーニー』の方では、具体的なファシリの流れまでは書かれていませんでした。3つの問いはゴールデンサークル*4をもとに考えられているとのことだったので、ゴールデンサークルワークショップのやり方が書かれた別の書籍『チームビルディング超実践ガイド』*5を参考に、以下の流れでやりました。

細かいですが、60分の予定でどんな風にやったのかがわかるように、実際にやった時間割を載せておきます。それぞれのステップでファシリとして意識したポイントもあわせて書いています。

タイムライン

  1. チェックイン(5分/累計5分)
    • 3つの問いの説明と、このワークを持ってきた理由を説明する
    • この場における約束事の共有をする
  2. チームとしてのWhyに対して、メンバーそれぞれが付箋を出す(8分/累計13分)
    • 書けた人から自由に貼っていく
    • 何枚でも書いてよい
  3. 出てきたWhyの付箋のグルーピングと優先度付け(7分/累計20分)
    • 似たものがあればグルーピングしてもらう
    • チームとして大事にしたいWhyの優先度をつけてもらう
      • 問いかけ例「出てきた付箋たちは、みんなどれが一番大事にしたいか認識揃ってますか?」
  4. チームとしてのHowに対して、メンバーそれぞれが付箋を出す(8分/累計28分)
    • どのWhyに対してのHowかを、線を引きつつ出してもらう
  5. 出てきたHowの付箋への感想を喋ってもらう(7分/累計35分)
    • 発言の偏りがないように話を振る
    • 付箋の内容でわからないところがあれば訊いてくださいと伝える
  6. 個人としてのWhyを出してもらう(8分/累計42分)
  7. 1人1分で出したWhyについて喋ってもらう(4分/累計46分)
    • 「一言喋って」だと人によって短かったり長かったりと差が出やすい
    • 1分と具体的な時間を伝えておくのが吉
  8. お互いのWhyに対して質問する時間を取る(5分/累計51分)
  9. 今までの話の中で付け足したい付箋があればアップデートする(5分/累計56分)
  10. クロージング&バッファ(4分/累計60分)

ファシリで工夫したこと

約束事の共有

チェックインの時間を使い、以下の文言を共有して守ってください、とお伝えしました。

  • 問いに対して、とにかくいっぱい悩んで、いっぱい考えてください
  • どんな付箋が出ても、それがチームにとっての現状だと受け止めてください

これは、ドラッカー風エクササイズなどのタフな質問をする系に言えることですが、質問が難しくて答えられない、もしくは出した本人が本当か…?という納得感の薄い付箋が出てくる可能性があります。

ただ、答えられないという事も、いまのチームの現状だというフィードバックだと思うので、それをちゃんと受け止められるようになって欲しいということでお伝えしました。

また、答えられない・納得感の薄いものが出たとしても、問いに向き合い続けることこそが大事なので、それもお伝えするようにしました。

(みんな積極的にいっぱい付箋を出してワイワイしてくれたので、結果的に杞憂でした)

視界に入らないように、徐々にフェードアウトする

これは普段のふりかえりのファシリにも言えることですが、チームビルディングの主役はそのチームです。

ファシリテーターは議論が向きたい方向にちゃんと促進できれば良いので、ある程度問いかけをしたりして勝手に話し始めたら、チームの視界から消えるように裏手に回ったり、端っこに佇んでひっそりと息を潜めてたりします。

チームビルディングという特性上、よりファシリテーターが出しゃばらない方が良いと思うので、普段のふりかえり以上にそういう事を気にしました。

(もちろん議論が止まったり困ったりしてたら、ちゃんと声掛けるようにします)

感想などを話してもらって、なるべくチームでお互い喋り合うことを促す

フェードアウトする話と同じですが、付箋をただ出して終わるのはチームビルディングとしては良くないです。

出した付箋に対して気づきを得たり、共有する時間をなるべく取るようにしました。

  • 付箋を早めに出し終わったメンバーがいたら、他のメンバーの付箋を見てもらうように促す
  • チームとしてのWhyはグルーピングや優先度を付けるときに話し合いながらやってもらうよう促す
  • チームとしてのHowが出たあとは、それぞれ感想や「気になるところありますか」と聞いたりする

個人としてのWhyまで出し切った後は自由に喋らせておき、めちゃくちゃ盛り上がるようだったら、その後の予定は白紙にして時間いっぱいまで喋らせるつもりでした。

やってみた結果

個人的には、やってみて良かったんじゃないかなと感じています。

もともとの狙いどおり、チームが達成したい目標に対して考えたり、そのためにチームの大事にしたいことや、個人がなんのために今のチームにいるのかを言語化できる場になったように見えました。

今後チームがどのように進むかはわかりませんが、またタイミングを見てむきなおりの材料にしてもらえたら嬉しいなと感じます。

ふりかえり直後

やってみてのカイゼン点

How出した後にグルーピングすると良さそう

最後のアップデートの時間を取った時に、メンバーから「後で思い出しやすいようにHowをグルーピングしておきたい」という話があがりました。

たしかにその時間を設けた方がいいなとは思ったので、今度実践する機会があればその時間をあらかじめ組み込んだ方がよさそうです。

個人としてのWhyとチームのWhy、Howが接続できてそうかの問いかけ

個人としてのWhyを出し終わったあとに、チームとしてのWhy、Howが接続できてそうか。できていなければ、どうすると接続できそうか考えてみるといいですね、的な問いかけをしたかったのですが、すっかり忘れてしまったなと…。

先んじて説明するのも有りですが、そうするとどうしても「チームに接続できるようなWhyを考えなければ」という思考に誘導しそうだったので止めてました。

次回やることがあったらここは忘れないようにしたいです。

(今回見ているかぎりだと、みなさんチームとしてのWhyやHowに接続できてそうな雰囲気はあったので、結果オーライな感じでしたが)

付箋の出し方について

チームの方から出たフィードバックですが、付箋をいつものふりかえりの情報収集のノリでいっぱい出すのか、それとも考え抜いた渾身の一枚を出すのかがわかりづらかったそうです。

これについては、最初の説明で後でグルーピングする時間を取るので、いっぱい出して欲しいということを伝えた方がいいなと思いました。

他にやってみたかったなと思うやつ

個人的には、『コーチングアジャイルチームス』*6という書籍に載っていた「マーケット・オブ・スキルズ」という、メンバーが持つスキルに着目したワークは面白そうだなと思っています。いつか使ってみたいです。

https://juliavastrik.com/team/how-i-run-the-market-of-skills-exercise/

まとめ

今回は、ふりかえりファシリの依頼をきっかけに、『チーム・ジャーニー』の「3つの問い」を使ったチームビルディングを提案・実践してみた話を書きました。

「3つの問い」自体も、チームのWhyから個人のWhyまでを1時間で一通り言語化できて、始動直後のチームの土台づくりとしては十分な手応えがありました。チームが立ち上がったばかり、メンバーが入れ替わったばかりというタイミングには、ふりかえりの代わりにやってみても良いと思います。

また、依頼されたことをそのままやるのではなく、チームの状況を聞いた上で「今このチームに必要なのは何か」を考えて、ふりかえりの設計、または違うワークを提案するのもファシリテーターとして大事だと感じました。

読んでいただき、ありがとうございました。

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*1:『アジャイルサムライ』などで紹介されている、「自分は何が得意か」「どうやって貢献するつもりか」などの質問に答え合うワーク

*2:市谷聡啓著『チーム・ジャーニー 逆境を越える、変化に強いチームをつくりあげるまで』(翔泳社、2020年)

*3:書籍だと、チームがある程度機能した後のむきなおり時には順番を逆にすることもあります

*4:サイモン・シネック氏が提唱した、Why・How・Whatの3つの円で物事を捉えるフレームワーク

*5:ふりかえり実践会が技術書典8で頒布した『アジャイルな強いチームを作る チームビルディング超実践ガイド』。BOOTHで入手できます

*6:Lyssa Adkins著『コーチングアジャイルチームス スクラムマスター、アジャイルコーチ必携』(丸善出版、2024年)

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