ユーザベースが手がけるさまざまなサービスの背後には、これらを支えるプロフェッショナルたちの存在があります。そんな彼、彼女たちはどのような思いでユーザベースに加わり、日々の業務にあたっているのでしょうか。このシリーズではユーザベースのコーポレートITと情報セキュリティ組織で働くエンジニアや、プロダクト開発に携わるエンジニアに焦点を当て、外からは窺い知れない仕事の舞台裏をご紹介します。今回登場するのは、デジタルサイネージやロボット向け制御アプリ開発を経てユーザベースに入社し、現在は社内データ基盤の構築を通じ、社員によるデータの利活用を推進する岡芳樹です。
T Domain / Corporate Engineering Division
Data Engineer
岡 芳樹
2015年、関西大学化学生命工学部生命・生物工学科を卒業後、新卒で受託開発系の会社にプログラマーとして入社。デジタルサイネージや家庭用ロボットの制御用アプリなどの開発に従事する。2017年11月、株式会社FORCAS(現・株式会社ユーザベース)に入社し、Customer Success Teamに配属。顧客ニーズを内製システムにフィードバックする業務を経て、セールス部門、マーケティング部門でデータ環境の整備や業務オペレーションに従事する。2021年1月、事業再編によりユーザベースに転籍し現職。
# 私が貫く仕事の流儀
業務の最前線に立つメンバーや、現場を預かるリーダー、会社を率いる経営陣が常に正しい意思決定が下せるよう、広い視野と高い視座を持ちつつ、現場との対話を重ねて最適解を導き出し、真に使われるデータ環境の整備と利活用を推進。データをキーワードにユーザベースの成長にコミットする。
ハードウェア制御から
カスタマーサクセスへの転身
—— 現在の仕事内容を教えてください。
主にふたつの仕事を担当しています。ひとつは社員から寄せられるデータにかかわるニーズを受け、要件整理から可視化までの流れをサポートする仕事、もうひとつは各部署で使われるシステムごとに存在するデータをひとつの基盤に集め、データの利活用・可視化を効率化する仕事です。
—— これまでの経歴を振り返っていただけますか?
大学では生命・生物工学科に在籍し、食品廃棄物などからバイオエタノールなどの有用な物質を取り出す研究に取り組んでいました。同期の多くは食品関係や燃料関係の仕事に就くことが多かったのですが、私はもう少し仕事を幅広く捉えたくて、モノづくりを軸にさまざまな業種、業態の会社を検討した結果、ソフトウェア受託開発会社のプログラマーの道を選びました。
—— 当時はどんな仕事をされていたんですか?
家庭用ロボットやデジタルサイネージを制御するアプリケーション開発です。本格的なプログラミング経験がないまま入社しましたが、昔から物事をロジカルに考えるのが得意でしたし、自分の書いたコードがロボットを動かしたり、映像や音が出力されたりする分かりやすさも手伝って、楽しみながら試行錯誤できたように思います。また、以前書いたコードをモジュール化すれば開発工程がどんどん効率的になっていく感覚も好きでした。たぶんこの仕事が性格に合っていたんでしょうね。われながらいい仕事を選んだなって思います。
—— プログラマーとして楽しみながら仕事をされていたようですね。でも、なぜ転職しようと?
現在「SPEEDA Edge」の事業責任者で、私が入社した当時、FORCAS事業(現・スピーダ顧客企業分析)の事業開発担当だった土屋(翔)さんが、以前兄の上司だった関係で、学生時代からインターンに誘ってもらったり、社会人になってからも入社のお誘いをいただいたりしていたんです。そのころ私は短いスパンでたくさんの開発をこなすより、じっくり腰を据えてひとつの理想を追求するような開発に携わってみたいという思いが募っていたこともあり、3度目の打診で転職を決めました。ちょうどFORCAS事業がユーザベースから分社するタイミングでしたね。
—— 同じ開発職でも、ずいぶん分野が違います。不安はなかったのですか?
そうですね。確かに分野は違いますが、誘ってくださった土屋さんが話す、社内に洗練されたデータ環境を構築し、最適化されたアプローチによってお客様のロイヤリティを高める、ABM(Account-Based Marketing)戦略を実現させたいという意気込みを聞き、その世界観にワクワクしてしまったんです。不安よりも期待感のほうが上回ったので転職を決めました。
—— 入社後はどんなお仕事を?
入社後すぐに携わったのは、カスタマーサクセスチームの一員として、サービスを購入してくださったお客様がしっかりと製品を使いこなし、成果を出せるようフォローアップしながら、お客様からの声を集約しプロダクト開発チームにフィードバックする仕事です。その後、業務部門におけるデータ活用の実態を知るため、セールス部門やマーケティング部門に移り、データ環境の改善や整備、業務オペレーションを経験し、現在は、FORCAS事業がユーザベースに吸収されたのを機に発足した IT Domain のCorporate Engineering Division でデータエンジニアを務めています。
技術による解決策に固執せず、真のゴールを目指す
—— 前職を含め、これまでさまざまな立場と仕事を経験されました。この間、仕事に対する意識に変化はありましたか?
お客様が期待している以上の成果を出すことや、仕事の効率にこだわる姿勢は前職時代から変わりません。ただ、さまざまな仕事を経験するなかで、少しずつ視座が高まっているように思います。
—— どういうことでしょう?
ハードウェアの制御をしていたころは、依頼された仕様をもっとも効率よい方法で実装することが求められていました。つまりハードウェアの性能やお客様の要望という揺るがない制約のなかで「How」を突き詰めればよかったわけです。でも、いまは違います。誰も明確な答えを持っていないなか、多種多様なアプローチや選択肢のなかから最適解を選ぶには「なぜつくるのか?」「何をつくるのか」、つまり「Why」と「What」と向き合わなければならないからです。その上で業務の実態を踏まえてユーザーの気持ちに寄り添い、ビジネスへの貢献についても考えを巡らせる必要もあります。それで、おのずと物事を考えたり判断したりするときの視座が上がったんだと思います。
—— 技術による解決策を提案しないこともあるのでしょうか?
そうですね。私はデータエンジニアなので、テクノロジーを武器にデータの利活用を推進するのが仕事です。しかし、真のゴールは目的に準じた成果を出すことだと思えば、テクノロジーの活用にはこだわりません。たとえばあるユーザーから、手元にあるありもののデータを組み合わせて、何らかの示唆を導きたいと相談されたとします。でも、仮にいわれた通りデータを組み合わせても、意味のある示唆が出せそうにないと思ったら、採るべきデータの組み合わせやデータ入力のオペレーションを変えるなど、より確度が高そうな手段や方法を提案するでしょう。いくら依頼されたからといえ、手近な答えや楽な手段に飛びつかず、多少手間や時間はかかっても真の目的を達成することにこだわるようになったのは、前職とは大きく違う点だと思います。
データ基盤は会社に
なくてはならない「心臓」
—— 岡さんにとって「入社後のチャレンジ」といったら。どんな取り組みが思い浮かびますか?
各部署に点在している、さまざまなビジネスデータを統合する基盤づくりに携わったことですね。私がセールス部門やマーケティング部門で実務を経験していたときもそうでしたが、たとえば会議資料をつくるために、毎回複数のシステムにログインし、手作業で集めたデータをスプレッドシートでとりまとめるような非効率的な作業は当時珍しくありませんでした。こうした状況を変えようと、当時の上司で、現在上席執行役員 オペレーション統括を務めている張替(誠司)さん指揮の下、各部署で管理されていた営業データや会計データ、マーケティングデータを一元管理するためのデータ基盤を用意し、全社社員が権限に応じていつでも最新データにアクセスできる基盤づくりに参加できたのは、私にとって大きな経験になりました。
—— データ基盤の構築に携わってみていかがでしたか。
データ基盤は、何か重要な変化が起こったときにすぐアクションを起こしたり、説明責任を果たしたりするために欠かせない仕組みです。当然、事業判断や経営判断に大きな影響を与えるので、安易に失敗できない緊張感がありました。しかし、私自身が現場時代に苦労した経験もありますから、血の通った提案ができたのではないかと自負しています。このプロジェクトを通じて、部署ごと、業務ごとの個別最適ではなく、組織共通の全体最適とは一体どんなものか、考えを深めるきっかけになりました。
—— いま、仕事をする上で大切にしていることは?
最近、チームで「データ基盤は会社にとっての心臓」という話をよくします。心臓である以上、会社が存続する限り、すべての部署、すべての活動に「血」をいきわたらせなければなりません。もちろん会社が大きくなれば、それに応じて心臓もパワーアップしていく必要もあるでしょう。誰にとっても重要な「心臓」というポジションを任されているからこそ、経営陣やリーダー層が安心して意思決定が下せる状況をつくり、ひいては事業成長を後押しするにはどうしたらいいか、強く意識するようになりました。
想像を超える提案と、その実現に全力を尽くせるプロに
—— 岡さんは、これからどんな人になりたいですか。目標を聞かせてください。
以前から「社内システムであっても、顧客に届けるプロダクトと同じ熱量と品質でつくる」ことにはこだわり続けてきました。社内で扱うツールだからといって妥協せず、外に出しても恥ずかしくないベストなものを追求する姿勢は、これからも変わりません。その上でこれからは、「仲間の成長を支援しながら周囲を巻き込み、より大きなインパクトを残せる人」になりたいですね。今後、AIなどの技術がますます台頭してくると思います。しかし、そんな時代だからこそ、今まで以上に「仲間」の存在が大切になると考えています。一人でできることには限界がありますが、仲間と協力し、互いの熱量を高め合えば、想像を超える成果が生み出せると信じています。
—— これから挑戦したいことは?
大きく2つあります。1つ目は、「AI」というパートナーと共に、人に「余白」と「挑戦」を生み出す環境づくりです。AI活用の目的は、単なる業務効率化だけではありません。AIが最大限に力を発揮できるデータ環境を整えることで、働く人たちに時間的・精神的な「余白」をもたらしたいんです。その余白ができれば、人は自分が「本来注力したい領域」にエネルギーを注ぐことができます。それが仕事上のことであれ、個人の幸福を追求することであれ、「したい」という前向きな想いから生まれる行動は、本人だけでなく周囲にも良い活気を伝播させます。一見無駄に思えるような経験も、人の成長や創造性には欠かせません。AIに任せるところは任せ、人はその余白で、失敗を恐れずに新しいことや好きなことに没頭できる。そんな「正のエネルギー」が循環する土壌を、データエンジニアという立場から創っていきたいですね。そして2つ目は、その土壌の上で「社内と社外、2つの経済情報のシナジー」を生み出すことです。私は「経済情報」には、市場や競合といった「社外の情報」と、組織内の活動データである「社内の情報」という2つの側面があると考えています。
—— 社内と社外の経済情報がリンクする、ということでしょうか。
そうです。ユーザベースは「社外の経済情報」に特化したプロダクトを持っていますが、私たちはまず足元の「社内の経済情報」において、AIとデータを活用したベストプラクティスをつくり上げる。社内の情報活用を活性化させるその仕組みは、社外に向けたプロダクトとも、しっかりとシナジーを生み出せると信じています。社内で磨き上げた「品質」と「知見」が、結果として事業の競争力にもつながっていく。そんな内と外の経済情報を循環させられるエンジニアでありたいですね。
—— 最後の質問です。岡さんにとってプロフェッショナルとは?
相手の想像を常に一歩、二歩超えていく提案ができ、その実現のために全力を尽くせる人、です。これからは、そこに「AI」という強力なパートナーが加わります。だからこそ、人はもっと大胆に理想を描けるはずです。テクノロジーの力で限界を突破しながら、同時に人間ならではの「熱量」や「想い」も大切にする。そうやって、組織や事業の進化をリードし続けられる存在でありたいと思っています。