ユーザベースの自由な社風を支える「みんなの会」のつくり方(動画環境編)

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企業・業界情報データベース「SPEEDA」の開発チームに所属している川口と申します。

ユーザベースで大事にしている価値観として、「自由主義で行こう」があります。きちんと仕事の結果を出せば、出社時間や服装は自由で、出社の義務もないというものです。

一方、自由に対する責任の一つとして、毎週一回の全社会議だけは全員出席する必要があります。この全社会議が「みんなの会(Town Hall Meeting)」です。ここでは各チームの進捗報告やリリースされた機能の発表、事務連絡や新メンバーの紹介などを行っています。(以前は「全体進捗会議」という名前でしたが、社内投票の結果、この名前になりました。)

私が入社した2011年当時、オフィスは東京だけで、全体会議の出席メンバーも20人ぐらいでしたので、会議室に全員入り切るぐらいでした。それからオフィスも2回移転して、上海、シンガポール、香港と海外にも拠点も広がり、全体で160人前後のメンバーになりました。今でも全員が出席するスタイルでの会議は続いているのですが、各海外拠点への生中継を毎回行うようになり、海外メンバーからの発表や質問なども可能にしています。

このシステムの構築やオペレーションには私もかかわっており、試行錯誤を続けながらバージョンアップしてきました。この記事では、そんな「みんなの会」を支えている現在のシステムについて少しご紹介したいと思います。

なお、「みんなの会」については、先日公開されたSELECKの記事や、本ブログの竹内(当社チーフテクノロジスト)の記事でもご紹介しています。

seleck.cc tech.uzabase.com

目次

Zoomを使って全世界と中継

「みんなの会」の中心となるWeb会議システムですが、「Zoom」という製品を使用しています。いろいろな製品がある中で、「Zoom」では最大100ユーザまで同時接続可能というところが大きな特長です。

ユーザベースで現在使用しているのは25ユーザまでのプランで、海外拠点の各メンバーが接続するだけでなく、在宅や出張先からのリモートでの参加も出来ています。

なお、Zoomの無料アカウントでは最大40分で会議が切れてしまうという制限があるため、長時間会議を行う場合はProアカウント($9.99/Month)が必要になります。

会議への参加は、主催者からの招待メール中のリンクをクリックすることで行いますが、初めて参加する場合はアプリのインストールも自動的に行われます。

Windows、Macはもちろん、iPad・iPhoneやAndroid用のアプリも公開されていて、スマートフォンでも後述の画面共有やチャットを含めた一通りの機能が可能です。

「Zoom」はなかなか高機能でよく出来ていると思うのですが、「Skype」などに比べると若干取っつきにくいためか、日本ではあまり知られていなさそうです。これからの普及に期待しています。

zoom.us

スライドの配信もZoomの画面共有で

「みんなの会」では、東京オフィスのプロジェクター画面に、発表内容をまとめたプレゼンテーションファイルを映します。同時に、「Zoom」の画面共有機能によって、海外やリモートでの参加者にも同じ画面が表示できます。

リモート表示ではレスポンスが気になるところですが、スライド切り替え時の反映もスムーズですし、画質がオリジナルより大きく劣ることもありませんので、十分実用的だと思います。

「Zoom」の画面共有では、共有対象のウィンドウをアプリ単位もしくはデスクトップ全体で指定します。「みんなの会」のプレゼンテーションファイルはGoogle Driveのスライド形式(Googleスライド)で作成しており、ブラウザにてプレゼンテーションを行いますので、Google Chromeのウィンドウを共有しています。ケースバイケースですが、他の会議では、お手軽にデスクトップ全体を共有することも多いです。

ところで、スライドを開いて、メニューから「プレゼンテーションを開始」を実行すると、プレゼンテーションが全画面で表示されますが、Zoomでブラウザウィンドウを共有している場合は、全画面表示は共有対象外となるので、他のユーザにスライド画面が映らなくなってしまいます。

そこで、Google Chromeを使用する場合のみですが、「スピーカーノートを使って開始」のメニューを実行すると、ブラウザのタブ内にプレゼンテーション画面が表示されます。少しマニアックな話ですが、Zoomを使ってGoogleスライドの画面共有を行う場合はこの方法がおすめです。

ちなみにGoogleスライドですが、PowerPoint等と比較すると凝ったデザインや動きのものは作成しにくいですが、一つのファイルを複数人で同時に編集することが可能で、マージや差し替えの手間が省けるので、こういった会議の資料作成には非常に便利です。

なお、PowerPoint等のプレゼンテーションファイルからの変換も可能ですが、レイアウトが崩れることが多いので、注意が必要です。

www.google.com

「参加者の顔が見えること」が何より重要

「Zoom」では、会議の参加者の映像を画面に映すことが可能です。参加者がカメラを持っている場合に限定されますが、やはり声だけ聞こえるよりも、顔の表情も一緒に見えるのは重要なポイントだと思います。

なお、東京オフィスの場合は会議室に何十人ものメンバーが集まるので、通常のWebカメラでは全員を1つの画面に映すことは困難です。そこでいろいろ試しているので、少し紹介します。

  • BUFFALOの「BSW180ABK」というWebカメラは、180°の広角レンズで会議室全体の様子を映すことが出来て便利です。 ただし、ズーム機能も無いため、細かい部分を映すのには向いていません。
  • 発表者の表情が見えなかったり、質問者が誰か分からないという意見が挙がっていたので、私物のDVビデオカメラを持ち込んでみました。カメラマンが発表者や質問者にズームしたり、会議室全体を映したりと工夫出来るし、映りが良いと好評なようです。

しばらくはDVビデオカメラを使用してみたいと思いますが、段々と設備が大がかりになってきました。

なお、MacへのDVビデオカメラの接続ですが、「Thunderbolt - FireWireアダプタ」と9pin-4pinのFireWireケーブルを使用しています。これで、MacからはWebカメラと同様のビデオデバイスとして認識されますので、Zoomの設定画面にて選択することが可能になります。

iBUFFALO マイク内蔵60万画素WEBカメラ 180°広角モデル BSW180ABK

iBUFFALO マイク内蔵60万画素WEBカメラ 180°広角モデル BSW180ABK

アップル Thunderbolt - FireWireアダプタ MD464ZM/A

アップル Thunderbolt - FireWireアダプタ MD464ZM/A

Wii Uのマイクも使って音声環境を改善

「みんなの会」では、海外を含めて、毎回20台ぐらいのPCがWeb会議に参加しています。

インターネットを使用しているので、一時的に音声が途切れたりする時もありますが、音声の品質や遅延はあまり気にならないため、その点でもZoomは高評価です。

ところで、会議室に複数の人が集まってWeb会議に参加する場合、通常ではマイクは一つだけ設置すると思いますが、マイクから離れた場所にいる人の声が聞き取りづらく、聞く側にとってストレスになることがしばしばあります。

そこで、マイクについてもいろいろ試しているので、少し紹介いたします。

  • SANWA DIRECTの「400-MC001」というUSB接続のスタンドマイクは、高集音かつ全指向性の本格的な製品です。 声の大きさにもよりますが、10mぐらい離れた場所に座っている人の発言でもちゃんと拾ってくれるので、なかなか優秀です。
  • Nitendo Wii Uのワイヤレスマイク「WUP-019」ですが、実はWindowsやMacでも使用することが出来ます。マイクのレシーバーをUSB端子に差すだけで、Macから音声入力デバイスと認識されるので、とても簡単です。音声も非常にクリアに聞こえるので、大いに活用しています。
  • Wii Uでは2本同時に使用出来るそうなので、Macにワイヤレスマイク「WUP-019」を2台繋いでみましたが、残念ながら1つしか認識しないようです。

ワイヤレスマイクとスタンドマイクを同時に使用することが出来れば最高なのですが、Zoomではマイク、スピーカーとも1つのデバイスしか設定出来ません。

そこで、何か手は無いかと探したところ、Macでは以下のソフトウェアを組み合わせることで可能ということが分かりました。

  • Soundflower
    • 「仮想サウンドデバイス」で、例えばMacでインターネット中継を行う時に、同じMacで再生した音楽ファイルを配信するような場合に使用出来ます。
  • LadioCast
    • 複数デバイスからの音声入力をミックスしたり、複数デバイスに出力することの出来るミキサーです。

LadioCastでワイヤレスマイクと集音マイクをミキシングしてSoundflowerに出力し、Zoomの音声入力デバイスとしてSoundflowerを指定することで、両方のマイクの音声がWeb会議の参加者に聞こえるという仕組みです。

これによって、発表者がワイヤレスマイクで話しながら、聴衆の拍手や笑い声を集音マイクで同時に拾うことが出来ています。さらに、LadioCastで発表者の声に合わせて音量を調整することで、より聞き取りやすくなっていると思います。

また、現在のオフィスでは、HDMI出力のプロジェクタにスピーカーが付いており、東京オフィス以外のメンバーの発言はこのプロジェクターから聞こえます。

ハウリングを避けるため、通常ではマイクの音はスピーカーから聞こえないのですが、LadioCastの設定を工夫して、ワイヤレスマイクの音声のみ、プロジェクターに出すようにしています。東京オフィスのように広い部屋では、発表者の声が聞こえにくいこともあるので、この簡易拡声器機能がとても便利です。

なお、「Zoom」に参加している各メンバーは、基本的にマイクはミュート状態で、発言時のみマイクをオンにするようにしています。そのままでは、キーボードの操作音や周囲の会話などを拾ってしまうためです。

Wii U ワイヤレスマイク

Wii U ワイヤレスマイク

https://code.google.com/p/soundflower/code.google.com http://blog.kawauso.com/ladiocastblog.kawauso.com

有志メンバーによる同時通訳

海外のオフィスも繋いで会議を行う場合に避けられない問題として、言語の壁があります。これについても、様々なトライアルを行ってきました。

例えば、「みんなの会」を資料・発表とも英語で行っていた時期もありました。ユーザベースには英語の得意なメンバーも多いので、各チームとも流暢な英語にて発表が行われていましたが、もちろん全員そうではありません。私は英語が得意ではないので、事前に英訳した原稿を用意して臨んだのですが、ちゃんと伝わっていたのか怪しく、申し訳なかったです。

現在は、日本語版の資料と英語版の資料を用意して、2画面あるプロジェクターに片方ずつ映すようにしています。なお、Zoomで共有するのは英語版のみで、日本語版の画面はそれ専用のPCで映しています。ページ送りはそれぞれ手動で進めていますが、自動的に同期する仕組みも構想中です。

発表は当人の得意な言語で行われますが、Zoomのチャットで、有志メンバーによる同時翻訳が行われています。このため、プロジェクター画面に、プレゼンテーション資料とチャット画面を並べて映しています。翻訳を行うメンバーは、会議室に持ち込んだPCからZoomの会議に参加して、日本語の発表や質問は英語に、英語の発表や質問は日本語に訳して、リアルタイムにチャットに投稿しています。

また、チャットによる文字の通訳だけでは思いが伝わりにくいということで、さらに有志の方に立候補していただき、発表の同時通訳にもチャレンジしています。発表と通訳を交互に行う逐次通訳では倍の時間が必要なので、同時通訳で行うのが理想ですが、システム面での難易度も上がります。

そもそも、Web会議システムで二カ国語の音声に対応しているものはあまり無いようで、Zoomもサポートしていません。そこで、Zoomとは別の、通訳音声用の独立した会議システムにて配信しています。具体的には、各オフィスの専用PCをSkypeで繋いでおり、海外オフィス側でもSkype用のPCで通訳の音声を受信しています。通訳の音声はオフィス全体にスピーカーで流しており、各メンバーは必要に応じてZoomの音声と聞き分けています。

このような構成にしている理由は、当初は1台でZoomとSkypeを両方配信しようとしたのですが、配信側も受信側も準備にも時間がかかるし、PCの動作も不安定になってしまったためです。「みんなの会」は全社で行う会議ですので、トラブルが起きた場合でもすぐ復旧出来るように、なるべくシンプルな構成を心がけています。

なお、資料に沿った発表だけとは限らないし、専門用語が多く出てくる内容もあるので、翻訳を引き受けていただいている方々にはとても感謝しています。当社代表・新野による「白熱教室」という、その場でのディスカッションが主体となることもあるのですが、そういう会では翻訳がかなりハードだそうです。

ニコニコメソッドプレゼンで一体感のあるコミュニケーション

「みんなの会」に社員がもっと参加するための仕組みとして、当社オリジナルの“字幕コメントシステム”を取り入れました。これは、Google Chromeの機能拡張を使って、発表内容についての参加者からのコメントを、ニコニコ動画のようにプレゼンテーション画面上に字幕で流すものです。本記事の冒頭に示した画像が、スライドに字幕コメントがつけられている様子です。(ブログで紹介用に弾幕を貼ってもらいました。)

このシステムは、当社チーフテクノロジストの竹内が一晩で作成したそうです。これについては、当ブログにて竹内から技術背景についてご紹介しました。

tech.uzabase.com github.com

全社会議というと真面目で少し堅いイメージがありますので、当初はこのようなコンテンツが受け入れられるのか不安でした。ところが、いざ始めて見ると予想以上に好評で、もはや「みんなの会」に無くてはならないツールになりました。

例えば、SPEEDAやNewsPicksの新機能のリリースについての報告では、「いいね!」のマークが画面を埋め尽くしたり、バックオフィスからの経費精算手順の説明では、いつも間違っていた人から「すみませんでした」というコメントがあったり…。今までよりもリアクションが遙かにしやすくなり、会議に参加しているという意識が強くなって、「みんなの会」の雰囲気もかなり変わったと思います。

まとめ

今回の記事では、「みんなの会」のシステムについて、一通りご紹介いたしました。まだまだ完成形とは言えず、課題も多いのですが、その一方でかなり複雑になってしまっているので、よりシンプルにしていきたいと思います。機会があれば、さらに細かい部分についても、詳しく説明してみたいと思います。

ユーザベースの「世界一の経済メディアをつくる」というミッション実現のため、今後さらに社員数も増え、新しいオフィスも開設されていくと思います。物理的な距離があっても、「みんなの会」には全てのメンバーが同じように参加出来るべきです。完全な実現は難しいかもしれませんが、メンバーのアイデアとテクノロジーの力で、少しでも理想に近付けられればと思います。

ユーザベースでは、SPEEDAやNewsPicksに携わっていただくエンジニアを募集中です。こういったシステム構築や、企業カルチャーをつくる「みんなの会」などの取り組みに興味のある方も、採用ページやWantedlyからお気軽にご連絡ください。

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