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ユーザベースを、誰もがエンジニアリングを楽しむテクノロジー・カンパニーへ

この記事は、ユーザベースグループのTechメンバーによるポッドキャスト「Meet UB Tech #15」(収録公開 2022年4月15日)の書き起こし記事です。

https://tech.uzabase.com/archive/category/Podcast

2022年4月15日、ユーザベースは最も自由なテックカンパニーを目指すための新たな取り組みを発表しました。今回のMeet UB Techでは、ユーザベース代表取締役Co-CEO兼CTOの稲垣が登場。最も自由なテックカンパニーを目指す上での取り組みの内容やその目的、さらに私たちユーザベースが実現したい未来について、詳しく語ってもらいました。

以下、収録当日(2022年4月15日)の様子をほぼ全文採録でお届けします!

【登場人物】 ・稲垣 裕介:ユーザベース代表取締役Co-CEO/CTO ・赤澤 剛:NewsPicks Fellow兼AlphaDrive NewsPics CTO ・飯田 有佳子:Meet UB Techパーソナリティ/Product Development Team所属

ユーザベースが「テクノロジーカンパニー」を掲げる理由

飯田:それでは早速登場していただきたいと思います。稲垣さん、よろしくお願いします。まずは簡単に自己紹介をお願いします。

稲垣:ユーザベースで代表取締役Co-CEOをしている稲垣です。本日から同時にCTOを名乗ることになりました。よろしくお願いします。

イイダ:本日からCTOということで、とてもおめでたい日ですね。今回も共同パーソナリティーとして、NewsPicks Fellow兼AlphaDrive NewsPics CTOの赤澤さんにもご参加いただいています。赤澤さん、よろしくお願いします。

赤澤:よろしくお願いします。今日はとても楽しみにしていました! 宜しくお願いします!、 イイダ:本日もリラックスして皆さんに情報をお届けできればと思います。それでは、さっそくお話を伺っていきたいと思います。赤澤さん、まずはどのあたりからお話を伺っていきましょうか。

赤澤:「なぜ?」という部分もいろいろと深掘っていきたいんですが、まずは、そもそもユーザベースがどういう取り組みを発表したのか、稲垣さんの言葉でしっかり語ってもらいたいと思います。

稲垣:今回ユーザベースとして「テクノロジー・カンパニー」を掲げていきたいと思っています。その背景にはいくつかの課題意識があり、その中で描きたい世界があり、そして、そこに向かっていろいろな施策を打っていきたいという考えがあります。

一番象徴的な取り組みは、エンジニアもエンジニアではない職種の方も関係なく、グローバルも含めたユーザベースの全メンバーに対し、エンジニアリングをしっかりと学び、自分たちの「すぐそばにある力」として機能させていくということを支援する制度を作っていきたいということです。

この取り組みは、一見すると全員がエンジニアリングを学ばなければいけないという強制的なイメージがあるかもしれません。しかし決してそうではなく、今のこの時代において常に必要とされ、インフラのように当たり前に存在している力を、どうレバレッジさせてグループ全体の力にしていくのか? に対して、エンジニアリングを支援する制度を言語化することで、みんなが今まで以上に生産的かつクリエイティブな仕事ができるように支援していきたいと思っています。

赤澤:ものすごく良いことだと思うんですが、実際、従業員やエンジニアには何が起きるのかというところについて、もう少しお聞きしたいと思います。この目的に至った背景や、そもそもエンジニアにフォーカスを当てるというよりは、エンジニアリングという「技術」にフォーカスを当てているところがすごく気になっています。エンジニアではなく、エンジニアリングというワードを使っているところにはどういった背景があるか、伺えますか?

稲垣:まず一番大きな背景には、今、日本のエンジニアが非常に不足しているという状況があります。どこの会社でもエンジニアは本当に引く手あまたで、完全に売り手市場ですが、いろいろな会社は本当に困っている状況だと思っています。

幸いにもユーザベースの中ではいいチームを作れていて、いろいろな調整もできている部分はありますが、率直に言えば、それでもなお足りないという状況ではないでしょうか。

その背景の一つが、給与の高騰です。3年前ほど前から、エンジニアという職種全体の給料の平均は、毎年50から100万円くらい上がり続けているのではないかという体感値を持っていますし、直近のスカウト数を眺めていても、今すごい数のスカウトが来ているような状況です。このスカウトは、日本だけではなく、グローバルからも来ていると思います。

そういったニーズによって、日本のエンジニアがいろいろなところから引っ張られようとしていること自体は本来いいのですが、このままではリソースが本当に枯渇し、僕たちだけではなく日本全体で、エンジニアリングに対する施策をもっと打っていこうとしたときに、それができなくなってしまうのではないかと思っています。

ですので、そこを打破するようなことを僕たちの会社もやりたいですし、そういう一つのロールモデルを世の中に対して見せられると、面白いことにつながるのではないかと考えています。そこを目指してというところが、一番大きな背景ですね。

それ以外に前向きな未来の話としては、プログラミング教育が必修化されたことにより、小中学校などでも教育がどんどん進んでいくことが一つ。さらに、いわゆるノーコードやSaaSが普及する中、エンジニアだけではなくエンジニアではない職種の方にとっても、エンジニアリングを活用するシーンはどんどん増えていく傾向にあると思っています。

グローバルで見ると、実際に一部の企業ではエンジニアではない職種の方に対しても、プログラミングなどの教育を施そうという話が進んでいると考えています。それはまだあまり大きな動きではないかもしれませんが、僕たちはその先陣を切り、日本で新しい事例を作っていきたいと思ったのが、一番の背景ですね。

具体的な話としては、エンジニアリングに対して、それを習得したコンピテンシー、能力に対する報酬の追加をしたいと考えています。例えば、コンピテンシーとしてデータにしっかりとアクセスできる、スクリプトを書ける、アプリケーションを開発することができるなどの段階に対し、年収で最大50万円ほどアップするという世界を作れるといいのではないかと思っています。

イイダ:すごくワクワクしますね!

なぜ「エンジニアリング」という言葉にこだわっているのか?

稲垣:その上で、今「エンジニアリング」という言葉にこだわっている理由をお話しします。この施策は、一番強い言葉で言うと「全メンバーエンジニア化」ということになると思うのですが、僕たちのカルチャーとしてそれは嫌ですし、使いたくないと思っています。

僕たちは創業から「人とテクノロジーの両輪で事業をつくる」と言ってきました。ビジネスサイドやデザイナーなど、多様な職種とエンジニアが力を合わせることによって、SPEEDANewsPicksという製品ができたと思っていますし、それによって会社もできています。その中で、僕たちは全職種共通で一貫した給与テーブルを持ってやってきましたよね。

ですので、一つの職種だけを優遇することなく、出しているパフォーマンスが同じあれば同じように評価され、同じような報酬をもらえるということが、グローバルも含めて一貫しています。そして、みんなで目標を達成し、みんなで給与を上げてきたことが誇りなのではないかと思います。これは僕も好きな考え方ですし、この考え方がカルチャーとして定着していることが、一番大きな理由ではあります。

ただ、先ほど話したような背景の中で、今、エンジニアリングは本当に多くのところから求められている力であり、このままいくと会社としての競争力を保てないリスクが出てくるとも考えています。今回、過渡期として、エンジニアリングに対する報酬制度を新たに導入したほうが、会社もみんなもハッピーになるのではないかと思いました。

ですので、まずは3年という時間軸でこの仕組みを導入し、3年後には、さらに給与テーブル全体を上げるのか、継続してエンジニアリングに対するさらなる報酬アップをしていくのか、判断軸として入れたいと考えています。そういう制度を入れてくことが、ユーザベースのみんなのためになるのではないかと思い、今回のこの施策を打とうと考えました。これが全体像ですね。

赤澤:なるほど。僕もこの施策は非常にユーザベースらしいと感じています。僕もまだユーザベースに入って1年半くらいですが、ユーザベースにおけるフェアネスの考え方、同時に、異能は才能でエッジ──つまり、その人の強みを重要視するという考え方の両立が、この制度に表れていると思っています。

ユーザベースの給与の考え方

赤澤:ここからいくつか質問させていただきます。

まず僕自身、エンジニアチームを強化している身としては、今、エンジニアの採用市場がすごく大変な状況だというのが本音です。もともと給与水準や待遇については、稲垣さん、SaaSカンパニーの林さん(林 尚之/SaaS事業CTO)、そしてNewsPicksの執行役員CPO/CTOである文字さん(文字 拓郎)とも話していたのですが、やはり目下すごく大変です。

実際に給与テーブルを上げたいということも検討していました。でも稲垣さんと話していく中で、我々がフォーカスを当てるのは「エンジニアは特別な職種であるという概念ではなく、エンジニアリングスキル」であり、これはユーザベースらしい考え方だし、納得感がとても高いと感じました。

しかし、あえてカウンターパート的に言うと、実際にエンジニアリングスキルをフィーチャーし、エンジニアとしての待遇や環境を向上させていく中で、稲垣さんはほかの職種とのフェアネスや反応をとても気にされていたように見えました。そのあたりは実際いかがでしたか。

稲垣:まずエンジニアチーム自身で言うと、エンジニアだけ給与を上げるかどうかという問題は、去年も結構顕在化していたと感じていました。去年は給与テーブル全体を上げることで、それを顕在化させた感じだったと思います。

赤澤:そうですね。全職種の給与が上がりましたよね。

稲垣:そのときにエンジニアチームと話したら、「エンジニアとして自分たちだけの給与が上がるのは嫌だ。これまでみんなで会社を作ってきたからこそ、給与もみんなで上がりたい」と言ってくれて、すごく嬉しかったんです。そういう考え方を持ったチームになれていることは、すごく素晴らしいと思う。

一方で、今期またさらに給与水準が上がってきているというところは、当時から見ると大きなギャップの部分ですし、みんなも必死にやってくれています。そういう中、ここはトップダウンで一つ、みんなで考えて施策を打つのはいいことなのではないかと思いました。その背景も含め、今回の施策についてはみんな理解してくれているのではないかと思います。

エンジニアではない職種のメンバーたちとは、自分も元エンジニアの身として誤解されたくないし、どうすれば一緒にポジティブに考えていけるか話したいと思って伝えたのですが、思いのほか、みんなすごくポジティブにわくわくしてくれている感覚でした。そもそも技術に対するリスペクトがあり、過去も今も含めた体験として、「エンジニアチームと一緒だとこんなことができる」「もっとこういうふうにできたら嬉しいのに」みたいなことを考え続けていたと思います。さらに「エンジニアリソースがもう少し増えたら嬉しい」とずっと言い続けてくれていたので、これがいい方向に改善する可能性があるということで、みんなも違和感を持たず、一緒に挑戦したいと言ってくれたのは、本当に素直に嬉しかったですね。

赤澤:先日この施策を社内のzoomで全体に発表した際も、コメント欄がすごく盛り上がっていましたよね。

稲垣:エンジニアからすると、実際に給与が上がるというのも事実ですので、よりエンジニアがエンジニアリングに集中できる環境になるというイメージはありました。しかし、セールス系や編集などいろいろなチームから「実は私こういうスクリプトを書いたことがあります」とか、「実際にSQLを書いて、もっと自分で分析してみたかった」というように、「やりたい」「やってみたい」という声が非常に多く上がりました。

当然心配もあるでしょうし、これからもケアすべきことはあると思いますが、一緒にやっているメンバーや同僚、仲間はやはりすごいなという、ほっとした安心と嬉しさを感じながら、僕もコメント欄を眺めていました。みんなものすごくポジティブにとらえてくれているんだなと思いました。飯田さん的にはどう見えていましたか?

飯田:私は全くカウンターパートに立てないぐらい完全同意というか、すごく賛同しました。今、何度も話されていましたが、エンジニアだけの給与を上げるのではなく、エンジニアリングにフォーカスしているというのが、本当にユーザベースらしいなと思います。

今までもそうですが、ビジネスサイドにも、自分で行動ログのSQLを書き、一緒にプロダクトを成長させてくれたような方がいらっしゃいます。その人たちも含め、チームのみんなが「これからも頑張っていこう」「もっとプロダクトに対していいことをやっていこう」と、より思えるような環境になったのではないかと思うので、すごく嬉しい制度です。

稲垣:純粋に楽しいですよね。

飯田:そうですね。

稲垣:目の前の作業がみるみる自動化されたり、アウトプットが一瞬で出力されたりということだけは、エンジニアリングを使わないと解決できない領域だと思いますし、エンジニアではない職種のみんなも、自分でそれができたらすごく感動すると思います。報酬の考え方については、常に葛藤や難しさが付きまとう前提がありますが、エンジニアリングを学ぶこと自体は、みんなにとってもすごくハッピーなことではないかと素直に思っていますからね。

赤澤:僕はエンンジニアとしてというより、社会人として、みんながもっと「これをやってお客さんに喜んでもうらうんだ」「会社を大きくしていくんだ」と、やりたいことをできる時間がどんどん増えたらいいなと思います。

ですので、みんながエンジニアリングを使えば、「自分がやらなくてもいいかな」「僕・私でなくてもいいかな」ということをどんどん自動化し、安定的に同じ結果が得られる状態になって、自分でなくても任せられることが増えて、もっと自分の強みに時間を割くことができるようになると思うので、そこはわくわくしますよね。

飯田:そうですよね。この制度は、プロダクトの進化がさらに加速されるような想像ができますよね。

社内の反応

飯田:エンジニアのメンバーからもらったコメントと、エンジニアではない職種のメンバーからもらったコメントの両方があるので、それぞれ紹介させてください。まずはエンジニアメンバーからのコメントです。

「エンジニア採用市場との乖離を出発点としながらも、エンジニアだけではなく、エンジニアリングにフォーカスして給与をアップする制度を作るのは、ユーザベースらしくて素敵だと思いました。マンパワーではなく、道具を使ったり、方法の整備によって解決することを良しとする文化が浸透していくことを個人的に期待しています。 直近の話としては、実際の研修制度の運用やレベルの査定、金額の見直しの運用にはいろいろな難しさがあるはずですが、これはどんなチャレンジでも共通する、やってみないとわからない部分なので、否定的な意味ではなく、難しそうだけどやってみようという気になりました」

素晴らしいコメントですね。ありがとうございます。

飯田:では続きまして、エンジニアではない職種のメンバーからのコメントを紹介させてください。

「他職種とのフェアネスを考えるのであれば、例えば営業力にもインセンティブを発生することはありかなとも思いました。ただ、もちろんそのスキルが現在の業務にどうヒットするかの観点は必要ですね」。

ということでした。

赤澤:なるほど。稲垣さん、今の1つ目のコメントは期待通りというか、狙い通りの形だったかと思いますが、2つ目の「エンジニアリングスキルと同様にいろいろな業種のスペシャルなスキルがあると思うので、こういったところにも今後フォーカスを当ててはいかがでしょうか」というコメントは、私も聞いていてなるほどと思いました。なかなか難しい感想かもしれませんが、いかがでしょうか?

稲垣:そもそものユーザベースの報酬制度の考え方で言うと、こういうものも含めたスキルをコンピテンシーとして定義して能力評価し、それに対して報酬を受け取ってもらうというスタイルではあるんですが、今回のように「エンジニアリング」を外出しして、あえて特化させてやるという今回の選択は、会社のフェーズフェーズではあり得るのではないかと思っています。

僕がパッと思いついて、今後あるだろうなと思うのは、例えば英語ですよね。ユーザベースが、日本発の、世界に向けた経済情報プラットフォーム、経済メディアを作っていくときに、語学の問題は必ず出てきます。

今、実際に英語をよく使う各チームのコンピテンシーには、すでに明確に英語が加点要素として含まれていて、それが満たされたらステップアップする動きになっています。僕たちがもう少し日本で一定以上の力を持てるようになり、グローバルに本腰を入れていくぞというときには、そこを加点式にすることは十分にあり得る話です。間違いなく可能性がある領域ですし、そういった施策をその時々で柔軟に打つのはとても大事なことだと思うので、ぜひやりたいと思っていますね。

もう共同代表の佐久間さんと話していたときに、領域を越境していく力、そこに対して加点する力、つまり今届いていないところを越境していくといいのではないかという話になりました。もちろん僕たちのフェアでオープンな給与テーブルということを考えると、最後はやはり統一できると一番きれいではありますが、その時々で僕たちが挑戦していこうとするときには、まだそれほど大きな会社ではない中で、いろいろな施策を打たなければいけません。

ですので、その時々に特異点として今回のような報酬制度を追加して出し、その分、さらに越境していく力をどうやって作るかはわかりやすいのではないかと思いました。

赤澤:ありがとうございます。越境する力ですか、確かに。

ユーザベースはテクノロジーカンパニーのロールモデルを目指す

実はこの流れでもう一つ聞いてみたいことがあります。今回の目玉の一つとして、エンジニアリングに対してプラスの報酬を払い、結果的にエンジニア職のメンバーについては、おおよそ50万円〜の年収アップが図られるという点があります。

ユーザベースはものすごくいいでしょう、と素直に言いたいというのはさきほどの通りなんですが、実はまだ言えない範囲も含めて、このあとまだいろいろな施策があると思います。稲垣さんが今日のPodcastでもおっしゃられたように「ユーザベースはすごいですよね」で終わらずに、我々が先駆けてやってみたい、ロールモデルを目指したいというお話がいくつかあったと思いますが、そこにはどういう思いや背景があるのか、改めて聞きたいです。

稲垣:そもそも「ロールモデル」という言葉を使っている理由についてお話しします。僕たちは14年前に、当然ゼロから会社を作りました。いろいろなものが足りない中で一つずつ進んできましたが、世の中で明確に承認されたと感じたのは、IPO自体ではなく、IPOのタイミングであったことです。

IPOの直後、エンジニアからCEOに変わっていた僕は、あるパーティーに呼ばれました。本当に嫌だと思いながらも、ユーザベースの名刺を持って頑張って行ったんですが、そのときにいろいろな人に囲まれて、「ユーザベースがIPOできたというのは本当ですか。すごいですね!」と言われ、「どういう意味ですか」と聞きたくなりました。

赤澤:どういう意味だったんですか?「え、嘘でしょう?」というニュアンス?

稲垣:これは「こんなに自由な会社がIPO審査をくぐり抜けられたのですか」という意味でした。それはすごく光栄なことだと僕は思います。

確かに僕たちも、どうすればユーザベースの文化を壊さずにIPO監査を超えられるのかについてはすごく悩みましたし、イメージとして杓子定規的なものを通らなければいけないのではないかと思っていました。

実際に僕たちに付いてくれた方たちも良い人で、ユーザベースを性善説的にすごく信じてくれました。僕たちのいい部分はいい部分として、カルチャーはそのままにIPO出資をしてくれましたが、一方でカルチャーの裏返しである駄目な部分に対してはしかるべき仕組みを作っていってほしいという、すごく建設的な話ができました。

みんながユーザベースみたいになりたいというわけではないと思いますが、その話し合いによって、少なくともこのユーザベースというロールモデルをベースにして、「ココはこうしたい」と真似をされるような会社になったんだと思えて、僕はそれがすごく嬉しかった記憶があります。

ユーザベースという一つの会社が、自分たちのカルチャーをベースにどんどん研ぎ澄まされていくこと自体が、世の中の人たちにとって一つのロールモデルになるのではないかと思いましたし、そういう感覚はすごくいいなと思っています。ですので、今回はテクノロジーの領域に関しても同じことができるのではないかと思ったのが、ロールモデルという言葉を使った理由です。

では、なぜエンジニアなのか? というところです。前提として先ほど話したような課題背景はありますが、今、エンジニアリングと掛け合わさった事業がどのようにできてきているかをさらに実態として見たときに、グローバルと比較するとまだまだ遅れているのではないかと思っています。

実態的な事業の部分について、東京では100億円を超えるベンチャーがいくつか出てきているかもしれませんが、グローバルに比べるとまだまだ弱い状態だと思います。また、地方を見ると、ソフトウェアも絡めたベンチャーはなかなか出てきておらず、地方在住のエンジニアと話すと、発注されたいろいろな仕事をしている人も多いという感覚があります。

大企業の人たちと話していても、エンジニアの採用の仕方がわからなかったり、採用しても、うまくビジネスと連結されない状態になっていたりするので、社内受発注のような感覚といいますか、いいものづくりという感覚まで発展してないんですよね。

この部分を超えてくためには、テクノロジー・カンパニーとしてのあり方というか、ロールモデルがもっと必要なのだろうと思っています。僕も地方に行っていろいろな人と話すことがあるんですが、やはり話しているだけでは駄目で、自分たちがしっかりと形を示したいという思いがあります。なので、そこを突っ切っていけないだろうかと思った部分もあります。

また、そういった環境を見ていると、報酬面一つとっても、日本はこの数年で逆転してきてしまっていて、今、オフショアの対象の国になっています。少し前の日本は、中国やベトナムにオフショアをかけていることが多かったと思いますが、今は巻き返されている状況にありますし、日本の中でも東京と地方の格差が結構広がっているという感覚もあります。

本当はいろいろなところに優秀な人がいますし、本来、技術は住む場所など全く関係なく、場所という縛りを超えたいろいろな可能性を持てるはずです。しかし、それが構造的な問題によって、発注された仕事しか来ない、いいものづくりの文化がないという状況にあり、どんどんその機会を失うということは本当に悲しいですし、もったいないことです。

もちろん日本人が一番偉いなどということではありませんが、生まれた国として日本をもっと活性化させたいという思いもありますし、日本が活性化していくこと自体が国を超えたロールモデルになれる可能性もあります。それを僕たちがしっかりと形にすることは、グローバルに進出していくことを掲げている会社としても、とても意味があるのではないかと思っています。

そこを突き抜けることに関しては、ユーザベースの中でもずっと、エンジニア出身のCEOという立ち位置を取り続けた僕が最適なのではないかと思った部分もあり、今回そこのビジョンを掲げ、明確に突き進んでみたいと思ったのが、個人的な感情の背景という感じでしょうか。

赤澤:もう「いいね」と言いたくないのですが、さすがにいい話ですね。癪だなとCEOに言うのもアレですが(笑)、本当にその通りすぎます。

ユーザベースだけではなく、ユーザベースがロールモデルになって、日本全体、エンジニア全体、エンジニアリング全体を変えてゆくというところは、僕たちだからできるというおこがましい話ではなく、僕たちも自分たちの形になれたらと思っているところではありました。ですので、稲垣さんがトップとしてそういう姿勢をずっと貫いてくれているのは、僕たちエンジニアとしては嬉しい限りですよね。

大丈夫ですよ。このあと何かおいしいものを食べさせてもらいますので(笑)

しかし、今おっしゃったことがまた具体的に発表され、第2、第3、第4という段階的にさまざまな施策が起こると思うのですが、これはまた別の機会でしょうか。

稲垣:そうですね。

赤澤:早く言いたいですね。驚かせたいですし、「いいな」と言ってもらいたいですし、皆さんをどんどん巻き込んでエンジニアの組織を強くしていきたいです。この「ユーザベースを最も自由なテックカンパニーにするんだ」というシリーズは、第2回、第3回、第4回と最低4回はやるので、ぜひ聴いてくださいね。これはもうシリーズですね。

飯田:そうですね。続きものですね!

稲垣:ぜひお願いします。

リスナーの皆さんへのメッセージ

飯田:ありがとうございます。では、まだまだ伺いたい話もたくさんあるんですが、お時間が来てしまったということで、本日はこちらで締めさせていただこうと思います。

では、最後に稲垣さんからリスナーの皆さんへメッセージをお願いできますか。

稲垣:先ほどお話ししたように、今回僕たちとしては一つのロールモデルの提唱に力を入れて頑張っていきたいと考えていますが、それが全てではありません。僕はあまり仰々しく「社会」などと言うタイプではないんですが、それでも現状を見ていると、日本のエンジニアは本当にもったいないと感じますし、同時にすごく可能性があるところにもいるので、ここからどうやって舵を切るかによって、本当に変わると思っています。

その部分について、エンジニアリングを通じ、エンジニアも含め日本のビジネスが良い方向に行けたらと思っているので、ぜひそういうディスカッションはさせていただきたいですし、僕としても主体的にそういうディスカッションができるようなイベントの場やコミュニケーションの場の設計を推し進めたいと思っています。個人的にもご連絡をいただける方がいたら、日本のためになることを一緒に話をさせていただけたら嬉しいと思っています。

飯田:稲垣さん、ありがとうございます! 今回の発表内容やユーザベース、NeswPicksのエンジニア組織についてより詳しく質問したいという方は、チームのリーダーたちとカジュアルにお話もできますので、ぜひMeetyからご連絡ください。 それでは、本日もお聞きいただきありがとうございました。また次回のMeet UB Techでお会いしましょう。それでは皆さん、ありがとうございました。

稲垣・赤澤:ありがとうございました!

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