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エンジニアが今日から始める英語学習の継続方法

1. はじめに

こんにちは。ソーシャル経済メディア「NewsPicks」でエンジニアをしております小林です!

皆さんは英語学習に取り組んでいらっしゃいますか?エンジニアとして技術ドキュメントや国際カンファレンスの動画等で英語に触れる機会があると思います。また、技術的なスキルはあるが、英語を話すことが苦手な場合、将来的に市場でどう評価されているかの動向も気になるところです。

最新の2023年度の報告によると、世界的にITエンジニアの給与が上昇している一方、日本では前年比USドルベースで5.9%減少、現地通貨(円)ベースでもわずか0.4%増加に留まっています。残念ながら、世界と比較した時に日本の給与の優位性がなかった一年となりました。今後もこの差が開く一方であれば、個人や企業が国際市場で競争力を保つために、英語能力の向上も必要になる機会が高まっていくことを示唆しています。

しかし、「英語力を伸ばしたい」と思っても、学習方法はネットで探せばたくさんありますが、忙しい日常の中で学習を継続するのは簡単ではありません。 そこで今回は実体験として、仕事をしながらも毎日3時間以上を一年間継続して学んだ、英語学習の継続についてヒントをご紹介したいと思います。

参考文献: corporate.resocia.jp

2. 高いモチベーションを維持させる方法を知る

学習を始めた頃はモチベーションが高いものの、時間が経つにつれて徐々に下がり、学習を止めてしまうことは珍しくありません。 私自身も同じような体験をしたことがあるので、学習に入る前に学習の動機付けの理論をいくつか学ぶことにしました。特に、第二言語習得の研究で知られるDörnyei氏の「Directed Motivational Currents(DMC)」の概念は、長期的な学習目標に向けて持続的なモチベーションを維持するのにヒントになります。DMCは、どのような要素が特定の目標に向けて長期的な強い動機付けの流れを作り出し、学習者がその目標に到達するまでの道のりを支えるかを体系化したものです。

DMCの状態にある学習者は、以下の特徴を持っています。

  1. 明確で重大な目標: 中長期的な学習目標を設定し、それが明確で重大な目標であることでモチベーションを維持し、学習への取り組みが具体化されます。

  2. 学習開始のきっかけ: 学習開始の具体的なきっかけは、学習への初期の推進力となり、継続するための原動力にもなります。

  3. 学習プロセスの構造: 中長期目標達成のため、小目標を設定し、それを達成するために日常生活に習慣的な学習を組み込み、定期的に進捗を評価し、計画を調整します。

  4. 前向きな感情: 学習に対する楽しみや達成感、自己成長への満足などの肯定的な感情を持つことが重要です。内発的な動機による自発的な学習は、継続性と効果を高めます。

私は学習を始める前に上記の特徴を踏まえた自己分析の質問リストを作成し、これらに回答して自分の英語学習の目標を明確にしました。 もしこれから英語学習を始める方はこのワークを面倒だと思わずに、必ずこの質問リストを作成してください。例えどんなに仕事や家庭のことで忙しく、体力的にも精神的にも辛い状況になっても途中で折れないようにするための必要な作業です(もし途中で止めてしまっても、ここで決めた目標を見て再開するキッカケにもなります)。 最後に付録として、この質問リストを掲載しておきます。

参考文献:

3. 習慣化に至るまでのプロセスを描く

次の段階では、当然のことながら学習の習慣を身につけることが重要です。ロケットの打ち上げのように学習を始める初期段階での高いモチベーションという推進力を活用し、そのエネルギーが尽きる前に習慣へと移行できれば、自然と目標に向かって毎日前に進むことが可能になります。 ちなみに、日常生活での習慣形成の研究によると、以下のような結果が得られています。つまり、個人差はあるにしても最低でも18日間は英語学習を継続しないと習慣化しないことがわかります。

  • 習慣化までの時間は個人差があり、最短18日、最長254日(中央値は66日)かかる。
  • 単純な行動(例: 朝食後に水を飲む)は習慣化しやすいのに対し、複雑な行動(例: 夕食前に15分間走る)は習慣化しにくい。
  • 1度の行動の機会を逃しても習慣化形成に大きな影響はないが、1週間続けて機会を逃すと習慣獲得に影響が出る。

参考文献:How are habits formed: Modelling habit formation in the real world

また、次の記事によれば習慣化にはいくつかの障壁が存在するため、これらをどのように克服するかについて、事前に戦略を練っておいた方が良いです。

参考文献: newspicks.com

例えば、個人の体験談として学習初期の「反発期」(1〜7日目)を乗り越えるためには、自分に合ったコンテンツを見つけ、「英語学習は楽しい」と脳に刷り込むことが効果的です。この期間、私は会社の7日間の連続休暇制度を利用し、全ての時間を英語学習に費やしました。具体的な学習方法は割愛しますが、集中力が低下したときは洋楽を聴いたり、歌ったり、ダンスをしたりするなど、学習を楽しむ工夫をしました。

次に来る「不安定期」(8〜21日目)は、個人的に乗り越えが最も困難だと感じました。この期間は、実生活で英語学習の日常ルーティンを構築することに焦点を当ててください。例えば、毎朝5時に起床し、近所の定食屋で同じ朝食メニューを注文、帰宅途中のコンビニでいつものコーヒーを購入後、学習を開始し、勉強後には仕事をし、夜は22時に必ず就寝するルーティンを繰り返しました。

最後の「倦怠期」(22〜30日目)を乗り越えるには、初期の高いモチベーションを再び補充することが重要です。「2. 高いモチベーションを維持させる方法を知る」に関する過去のワーク内容を見て、1日目の気持ちを思い出し、自分の目標や学習の進捗を他人と共有してみてください。

これらは、学習を習慣化する過程で直面する可能性のある障壁を乗り越える方法について、個人的な体験に基づいて共有させていただきました。

併せて、英語学習を習慣化する上で意識した点をまとめました。ぜひ参考にしてください。

TIP1) 人生での優先順位を付けてスケジュールを調整する

学習のために、まず日常のスケジュールを見直す必要があります。仕事や家庭、趣味に割くどの時間も大切だと思いますが、まずは1週間のスケジュールを書き起こし、優先順位をつけて、その中で隙間時間を見つけてください。 例えば、通勤時間を活用して英語のポッドキャストを聴いたり、昼休みに英単語を復習するなど出来ることはあります。

TIP2) 学習時間を分割する

「夜や休日にまとめて学習する」といった長時間連続での学習計画は、実行に失敗するリスクが高いです。より効果的なアプローチとして、一日を複数の短い学習セッションに分割することをお勧めします。 ポモドーロ・テクニックを利用し、25分間の集中学習の後に5分間の休憩を取る方法が効果的です。例えば、1タスクを30分と設定し、朝、昼、晩の3つのセッションにそれぞれ振り分けて実行します。この方法により、効率的に時間を管理し、一日を通じて継続的な学習を実現できます。 私はFocus To-Do - Pomodoro Technique & Tasksのアプリを活用して管理していました。

TIP3) 学習記録を付ける

学習の進捗を管理し、継続的なモチベーションを保つためには、学習記録を付けることが非常に有効です。例えば、学習管理のサービスを使用して、日々の学習内容や学習時間を記録します。これにより、自分の進捗を目に見える形で確認することが可能となり、達成感を得やすくなります。また、定期的に学習時間が蓄積されていくのを見ることは、学習を続ける大きな動機になります。一度学習の習慣が身につくと、この進捗を見て止めるのが惜しく感じ、自然と学習を継続するようになります。

TIP4) SNSに学習記録を載せる

「パブリックコミットメント」という心理テクニックを活用し、SNSで学習の進捗を共有することは、目標達成率を高める効果的な方法です。たとえば、Instagramのストーリーに毎日の学習時間を載せることで、自分自身の逃げ道を塞ぎ、責任感を高めることができます。実際にこれを行うことで「凄くイタイやつ」と思われるリスクはありますが、目標に対するコミットメントを強化し、結果として学習の継続を促進することが期待できます。

TIP5) 定期的に振り返りを行う

時には「今の学習方法が最適か」という不安を感じることがあります。そうした時には、KPT法(Keep-Problem-Try)などの振り返り手法を活用し、日々の学習プロセスを見直すことが重要です。また、定期的に英語の試験を受けることで自身の成長を客観的に評価し、学習習慣の維持につながります。

TIP6) 仲間やコーチを見つける

1人で学習を継続させることは簡単ではありません。そんな時は、英語学習を行うコミュニティに参加してみたり(例えば、英会話カフェなど)、お金を払って英語コーチングサービスを受講してみるのも良いでしょう。 3ヶ月50万円でコンサルティングからコーチングまでしてもらえるサービスもあれば、学習サービスにコーチングプランがついた比較的低価格なものもあるので、状況に合わせて利用してみてください。

私の場合は以下のサービスを活用していました。

4. 一年間の学習を振り返って

私の場合、学生時代に英語が得意ではなく、実質的にゼロから(CEFR A1レベルから)始めましたが、一年間の継続的な学習により、4技能で目安としてCEFR B1レベルに到達しました。 ビジネスシーンで英語を流暢に使いこなすにはまだまだ道のりがありますが、継続的に学習を続けていくつもりです。 この一年で、英語を使う機会が格段に増え、思考が自然と英語に移行して、英語で会話する夢を見るようになったりもしました。また、オンライン英会話で自分の考えを英語で表現できるようになり、さらに、字幕なしで視聴できる映像コンテンツが増え、新たな興味を探求する幅が広がり、さまざまな視点から物事を考える力も養うことができました。

5. 終わりに

エンジニアにとって英語はキャリアを切り開くための一つのスキルではありますが、習得は容易ではありません。 学習を継続させるためには、学習初期の高いモチベーションを習慣化によってコントロールしていく必要があります。今回紹介したヒントを活用して、一緒にエンジニアとしての英語力を磨きましょう。 英語学習は一夜にして結果が出るものではありませんが、コツコツと続けることで必ず成果が出るはずです。一歩ずつ進んでいきましょう!

付録:自己分析質問リスト

明確で重大な目標

  1. 目標設定: あなたの英語学習の最終目標は何ですか?
  2. 目標達成時のイメージ: 目標を達成したあなたの姿をどのように想像しますか?その時、どのような感情を感じると思いますか?
  3. 目標達成のメリット: この目標を達成することで、仕事や個人生活にどのような良い影響がありますか?

学習開始のきっかけ

  1. 学習の動機: 英語学習を始めたきっかけは何ですか?
  2. 動機の持続性: この動機は長期的に学習を継続するために十分な強さがありますか?
  3. 動機に関連する具体的な事例: あなたの動機に影響を与えた具体的な出来事や経験はありますか?

学習プロセスの構造

  1. 小目標の設定: あなたの最終目標を達成するために必要な小目標は何ですか?
  2. 日常の学習習慣: あなたの日常生活にどのようにして英語学習を組み込むことができますか?
  3. 学習進捗の評価: 自身の学習進捗をどのように定期的に評価しますか?
  4. 振り返りと調整: 学習の進捗が思うようにいかない場合、どのように計画を調整しますか?

前向きな感情

  1. 内発的動機付け: 英語学習に取り組む上で、あなたを最も動機付けるものは何ですか?
  2. 感情的なつながり: 学習中に感じる肯定的な感情は何ですか?また、どのようにしてこれらの感情を育むことができますか?
  3. 自己肯定感の維持: 学習の困難や挫折に直面した時、自己肯定感を維持するためにどのような戦略を用いますか?
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