
はじめに
はじめまして。ユーザベースのOperation組織で業務効率化やAIカルチャーの浸透を推進している久保田です。
Operation領域では生成AIの影響力が急速に大きくなっています。異常検知や事務作業の自動化、問い合わせへの自動回答など効率化できる白地が大きく、効率化を検討する上では不可欠なツールの一つです。
その中で、生成AIとの付き合い方について気づいたことがあります。それは、『物事への向き合い方次第で、個人や企業が生み出す価値に大きな影響があるのではないか』ということです。
この記事では、専門のエンジニア集団ではない私たちが、より価値を生み出せるようなAIとの向き合い方をどのように醸成していったかの舞台裏をご紹介します。
スタートは「思考停止」からの脱却
発端は、2025年2月に会社から発信された「The Big AI Shift」という全社的な大号令と、組織長から発せられた「OpsのAI Shift」というOperation組織としてのAI戦略です。 そこには、未来を見据えた具体的なAI活用に関する戦略が描かれており、その完成度に圧倒されたのと同時に、AI Shiftが社運をかけた重要戦略であることを強く認識しました。
一方で、当時の私たちはAIに関する知識がほとんどありませんでした。私自身も含め、これを十分理解できる者はおらず、リーダーやメンバーは「何を言っているのか」という戸惑いの方が強く、何が分からないかも分からない状態でまさに「思考停止」の状態でした。
危機感だけは募るものの、自分たちがその戦略を実行に移すというイメージが全く湧いていませんでした。 しかし、何らかのアクションを起こす必要があるという認識は組織内で共通しており、まずは行動を開始することにしました。
「AIサークル」の誕生
大号令から1か月後、非公式組織「AIサークル」が誕生しました。 「非公式」としたのは、組織化までの時間を削減し、スピードを重視した戦略的選択です。意思のあるメンバーが即座に自由に動き始められることが重要でした。
組織のオペレーションを効率化するという大前提はありましたが、前述の通り非公式の組織であり、どこから始めてよいかわからないという組織状態だったため、AIカルチャーを育成する「カルチャー」担当と、実案件を推進する「基盤」担当という形で役割を分けて活動を開始しました。 当時は知識不足もありAIに対する不安が期待を上回っていたため、特にカルチャー面で課題があると判断し施策に着手しました。
活動内容
施策は、以下の3点をテーマとして実施しました。
知識のハードルを下げる:全3回のAIツールレクチャー会を実施しました。「まずは道具を知る」ことを目的に、社内のAIボットやNotion AI、Perplexityといったツールの使い方、およびLLMの利用ガイドラインを解説し、認知的な障壁を取り除きました。
心理的安全性を確保する:週次で「AIよろず相談会」を開始し、迷った際の駆け込み寺として、初歩的な質問も含めて歓迎される場を設けました。「無知だと思われるかもしれない」という恐怖心を軽減することを狙いとしました。
アイデア創出をゲーム化する:「実現していなくてもOK」というグランドルールのもと、事例収集ゲームを実施しました。アイデアを即時実行しなければならないというプレッシャーを抑え、AIの使い方を考えること自体の楽しさを促しました。
これらの施策は、小さな成功体験を積み重ねる形で機能し、次第にメンバーの自発的な改善事例も増えていきました。
この他、基盤担当の方でも技術やツールのキャッチアップを行い、実際の案件を進めることで経験を積み重ねていく取り組みを実施しました。
起こった変化
3つの施策を通じて成功体験を積み重ね、心理的安全性が守られた結果、メンバーの思考法やコミュニケーションに変化が現れました。
相談の仕方が主体的になる:「どうすればいいですか」と答えを求める質問から、「xxというツールで解決できそうなんですけど、うまく動かないんです」という形で自ら解決策を試し、具体的な課題を持って相談する能動的な姿勢に変化しました。
相談会の反応が動的になる:他メンバーの相談を聞いているだけの状態から「やってみたので、後でやり方シェアしますね」という形で自らの知識を共有し、積極的に議論に参加するようになりました。
思考の解像度が上がる:「チャットボットが欲しい」という即物的な思考から「データがないとよい回答が得られないので、まずはデータ整備から始めよう」という形で成功の前提条件を理解した思考へと変化しました。
当初は、AIに対する不安を取り払うことでチームメンバーにAIをより効果的に活用してもらうことを第一目的とした施策でしたが、想像以上にメンバーの熱量や考え方に大きな変化を感じることができました。
一連の活動の学び
ここまで具体的な施策やその結果をご紹介してきましたが、結果的に私にも思わぬ学びがあった取り組みになりました。
最も強調したいのは、「向き合い方」が重要ということです。
良い向き合い方とは、難しく考えすぎないこと、恐れないことです。言葉にすればシンプルですが、人間は本能的に未知なものに身構えます。 「わからない」という状態は不安を生み、不安は思考を硬直させていきます。頭では理解していても、心はブレーキをかけてしまう ー これは誰にでも起こり得ることです。
だからこそ、私たちは「心理的安全性の確保」と「試行錯誤の奨励」に注力しました。相談できる場と安心して発信できる場を作り、「わからない」と言える空気や「やってみたけどダメだった」と笑える空気を醸成すること。この土壌を整えることが、向き合い方を変える第一歩でした。
そして向き合い方が変わった時、人間の行動は変容します。 それは、リアクションベースの行動から、意思駆動の行動への転換です。 意思が駆動していないと、「指示があったから動く」「問題が起きたから対処する」という受動的なサイクルになりがちです。
しかし、恐れが薄れシンプルに物事を捉えられるようになると、「私はこうしたい」という意思が生まれます。 この意思が燃料となり、自ら課題を見つけ、自ら動き出す原動力となっていきます。
どれだけ便利なツールがあっても、難しく考えすぎたり、失敗を恐れすぎると短期的にも中長期的にも価値は生み出しにくい。 逆に向き合い方さえ変われば、ツールの力は何倍にも増幅します。
この学びはAIに限った話ではなく、新たな状況や未知の事象に直面した際の「向き合い方」として普遍的なことだと感じています。 今後もAIを始めとして、外部環境は目まぐるしく変わっていくことは自明ですが、今回の学びを活かして変化を楽しみたいと考えています。
おわりに
2026年1月からAIサークルは公式の組織になり活動を開始しています。今後もAIを活用した業務効率化を通じて、社員がより創造的で本質的な業務に集中できる環境作りに取り組んでいきます。
読んでいただき、ありがとうございました。