こんにちは。NewsPicks プロダクトチームの文字です。今日はプロダクト開発組織のチームビジョンを作ったら、すごいパワーが生まれた話をさせて頂きます。
「経済を、技術でもっとおもしろく。」
今年の春、NewsPicks のプロダクトチームでは、こんなチームビジョンを作りました。実は NewsPicks のタグラインは「経済を、もっとおもしろく。」なので、会社の掲げるタグラインをほぼ踏襲しているように見えます。しかし一見凡庸なこのビジョンが、実はとても大きなパワーを秘めていたのです。
1/ なぜビジョンをつくったのか
そもそも、何故こんなチームビジョンを作ったのでしょうか。
NewsPicks をリリースしてからこれまで、プロダクトチームでこのようなビジョンは掲げたことがありませんでした。しかし、次の理由から改めて「我々がどこを目指しているのか・どんなチームでありたいのか」を言語化する必要があると感じ、今回チームビジョンを作ろうと決めました。
増大し続ける技術的負債と運用負荷
NewsPicks は、リリースしてから約 8 年が経過する長命なサービスです。その間、比較的少人数のプロダクト開発組織で、多数の事業を作ってきました。NewsPicks のエンジニアは歴史的にプロダクト志向が強い人が多く、プロダクトをつくり事業を成長させるプロセスを楽しんでいましたが、一方で増大し続ける技術的負債にはあまり手を入れられていませんでした。また、事業が多角化するにつれて、それぞれの事業運営に伴う運用負荷も増大し続け、少しずつ目の前の仕事に追われるようになり、元々のチームの良さであったプロダクト志向な特性も少しずつ薄れてしまっている状況でした。
組織の急拡大
そんな状況の中、今年になって会社としてプロダクトチームに大きな投資をすると決まりました。採用を頑張った結果、NewsPicks のプロダクトチームも年始から倍近い人数にまで大幅に増え、全体としては直近 1-2 年以内に入社した人の方が圧倒的に多い組織になりました。
上記の状況を踏まえ、改めて自分たちが目指すチームの姿を言語化するのが重要だと考えました。
たくさんの仲間が目の前の仕事に追われているのではなく、もっとみんなの創造性が発揮される組織にしていきたい。何よりも楽しく仕事をしてほしい。個別には一部のメンバーが課題意識を持って変えようとしてくれているけれど、全体としてはどうしても目の前の仕事に追われ、それが組織全体のムーブメントになっていかない。
この状況を打破するために、多くの仲間が増えた今のタイミングで改めて自分たちはどうありたいのか、少し未来を見据えた「むきなおり」をするのが大事なのではないか —— そう考えて、改めて自分たちのありたい姿を言語化することにしたのでした。
2/ みんなでビジョンをつくる
自分たちの大事にしている価値観を反映しながら、未来を向いたビジョンをつくる。そのために、まず二回に分けて合宿を行いました。
合宿の開催
まず事前に、メンバー全体に対して現状の課題感や状況についてアンケートを行いました。その上で、初回はリーダー陣を中心にビジョンの叩きを作るワークショップを実施しました。この合宿は、Uzabase の Co-CEO である稲垣さんや、SaaS 事業の CTO をしている林さんにファシリテーションをお願いしました。
続いて、内定者を含むチーム全員で、丸一日かけたオンライン合宿を行いました。こちらは大人数になるため感染リスクを考慮してリモート開催にしました。大人数でのリモート合宿は初めてだったので、それなりに時間をかけて企画を準備しました。
これらの合宿については、チームからも非常に好評でした。Zoom と Meet を駆使しながら、内定者を含む新メンバーと昔からいるメンバーが分け隔てなく議論できたと思います。紙幅の都合上詳細は割愛しますが、またどこかで合宿のノウハウについては書けると良いなと思います。
腹落ちできるビジョンが完成
合宿で議論を重ねていく上で、改めてみんなが大事にしている価値観が言語化されてきました。ワークショップの前半ではみんなが考えるプロダクトチームの「らしさ」を言語化し、後半で各チームごとにビジョンを作ってもらったのですが、例えば次のようなビジョンが出てきました。
なんだかチームの特徴が良く出ていませんか?(笑)
敢えて書き出してみると、僕たちが大事にしている価値観には以下があると思います。
- サービスの理想を、自分たちで体現したい。
- 理想を体現するためにも、楽しく・おもしろく仕事がしたい。挑戦したい。
- その前提として、自由と責任は両輪。個性を最大発揮して責任を果たす。
- 個性を最大発揮するために、弱みではなく強みにフォーカス。チームで補完し合い、挑戦を賞賛し合う。
- 自分たちが楽しみ続ければ、事業も組織も成長するし、より多様な異能が集まるはず。
ユーザベースでは「自由主義で行こう」や「異能は才能」などのバリューを掲げていますが、改めて自分たちが大事にしている価値観ともマッチしているなと思います。特にお互いの個性を尊重し、強みにフォーカスして補完し合うのは、既に我々自身が持っている「らしさ」です。
NewsPicks は AlphaDrive と一緒にプロダクト開発をしているのですが、この 2 社には技術系の役員が(私も含めて)4 人います。それぞれの特性は全く異なり性格や趣味も全然違うのですが、お互いの強み弱みを開示し合い、背中を預け合って組織運営が出来ていると思います。ユーザーベースも同様に、Co-CEO 体制をとってチーム経営をしています。
お互いに補完し合い、個性を発揮できる環境をつくる。そのために弱みも含めて自己開示とオープンコミュニケーションする文化は、私たちがとても重要視しているものです。
これらのビジョン案をもとにしながら議論を重ね、最終的に腹落ちする言葉に落とし込んだのが冒頭の「経済を、技術でもっとおもしろく。」です。実はこの言葉を提案してくれたのは当時の内定者だったのですが、すっと腹落ちする感覚がありました。みんなの反応も非常に良く、普段遣いしている言葉を改めて自分たちのチームの理想像に落とし込めたように思います。
こちらに議論過程で出てきた、私たちが大事にしている価値観を副文に添えて、冒頭のビジョンが完成しました 👏
3/ ビジョンをつくったら、どうなったのか?
合宿ではビジョンを作るだけでなく、ビジョンを実現するために「何をすれば良いか」も議論していました。その結果、この数ヶ月の間に色々なプロジェクトが実際に動き出しています。例えば・・・
- モバイルアプリのリアーキテクチャを開始。メンバーからの提案を受けて一部の新規開発を一時停止し、アーキテクチャ改善やテスト基盤の構築を推進。爆速で改善が進んでいます。
- ウェブアプリのリアーキテクチャを開始。メンバーからの提案を受けてウェブアプリのリアーキテクチャを推進するチームを組成。すでに BFF の導入や Next.js への移行を検証中。技術検証後、プロダクトチーム発で段階的なリニューアルプロジェクトを進める予定。
- バックエンド改善計画の推進。個々が持っている課題感を洗い出し、SRE と一緒に改善していくプロセスの整備を開始。最近では本丸のバックエンドサーバーを Java から Kotlin に移行し始めています。こちらについては別途 CTO の高山からも発信してもらおうと思います。
- ドキュメント管理基盤の移行。これまでもチームで Wiki を運営していましたが、新メンバーにとっても既存メンバーにとっても何が正しいか分からない状態でした。これを整理し、情報の透明性をさらに高めるための取り組みを開始しました。
- 目標設定やタイトルの相互公開。お互いの強み弱みを理解し、成長を支援し合う組織を目指して目標設定やタイトルもオープンにチーム内に公開するようにしました。
これが、数ヶ月の間に起きた変化です。もちろん他にも色々な効果がありましたし、いま仕込んでいる動きも沢山あるのですが、直近でわかりやすいところで言うとこのような変化がありました。
私たちは普段ミッションベースの組織体系をとっており、各チームで背負ったミッション(継続率の改善・有料会員売上の成長・広告売上の成長など)にコミットしてプロダクト開発を進めています。その中で、組織横断の大きな取り組みを推進していくのはすごく難しいです。なのに、それがどんどん進むようになりました。
ビジョンはパワー
短期間で上記の組織横断プロジェクトを推進できたのは、自分たちが目指すところを言語化し、共有できたからだと感じています。
副文にも書かれている「多様な異能の共創」と「未来を創るための挑戦」。これらを通じて「おもしろく」仕事をすれば、世界を変えていけるはず。その価値観を共有できているから、メンバーから「もっとおもしろく」するための提案が増え、ビジョンや価値観に沿った意思決定がやりやすくなりました。
振り返ってみて思うと、ビジョンをつくる前は「どうなりたいか」が曖昧だったと思います。個々に感じている課題感や実現したいことはあり、大枠ではそんなにズレていないものの、目指す姿が曖昧だとトレードオフを伴う大きな意思決定は難しい。何よりも、自分の考えていることを実行に移すとき、拠って立つ軸がない。結果として、組織全体に関わるような大きなムーブメントが、少し起こりづらい状態だったのではないかと思います。
目指す姿を具体化する過程で、自分たちが大事にしている価値観を改めて認識し、理想の未来に向かっていくための強い意志が生まれた。もともとみんなが潜在的に持っていたパワーが、一つの方向に向かって解放されたように感じています。
4/ これからのプロダクトチーム
以上、NewsPicks および AlphaDrive のプロダクトチームでつくったチームビジョンについて書かせていただきました。 直近では、このビジョンを実現するために次の方針を打ち出しています。
まだまだ課題も山積していますが、チーム全体としては前向きなパワーが溢れていて、これからどんどん未来に向けた挑戦をしていけると思っています。 一緒に未来をつくる仲間も積極募集していますので、もしこの記事を読んで興味をお持ちいただけ方は、ぜひご応募いただけると幸いです!