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3 年半でまるで別企業?大幅に改善した NewsPicks の DX Criteria を大公開!

こんにちは。NewsPicks CPO/CTO の文字です。先週、仕事が少し落ち着いたタイミングで久しぶりに DX Criteria を測定したので、今回はその結果を大公開しようと思います。

はじめに:NewsPicks は開発者体験に注力しています

NewsPicks は、まもなくサービス開始から 10 周年を迎える息の長いサービスです。およそ 10 年前に Uzabase の新規事業として立ち上がり、以降は比較的少人数のエンジニア体制で長らく開発が続けられていました。4 年ほど前からビジネスの多角化に伴いエンジニアを大幅に増員していますが、高成長の裏でシステム面では様々な箇所が老朽化しており、エンジニアを増員してもスケールできない状態に陥っていました(きっと多くの方が想像できる状況だと思います)。

そこで 2020 年に私と高山(現 VP of Data Engineering)が執行役員に就任したタイミングで、事業開発と並行して「最高の開発者体験」を追求することを大きな目標として掲げ、地道に改善を進めてきています。これまでの成果が一定出てきているのは実感しており、昨年は Findy Team+ アワードを受賞 できましたし、エンジニアの採用活動も順調に進んでいます。

こうした取り組みを始めるきっかけでもあり、客観的に分かりやすい診断ツールとして採用させていただいているのが、日本 CTO 協会が公開している「DX Criteria」です。実は高山が入社した翌年にも一度 DX Criteria の改善状況を発表させてもらったのですが、この記事ではその後の改善度合いについてお伝えできればと思います。

tech.uzabase.com

3 年半ですっかり見違えた DX Criteria

結論から先に書くと、現時点の DX Criteria 測定結果はこのようになりました 👏

左が 2019 年末のスコアです。高山が入社する直前、執行役員に就任するにあたって何をするか考えようとしたときに、ちょうど DX Criteria が発表されました。これ幸いと早速診断してみたのですが、ご覧の通り暗澹たる結果に……。このままでは開発組織の未来はないと考え、高山には開発基盤の改善を主なミッションとして担っていただくことにして、開発基盤チームを組成しました。それからおよそ 3 年半が経過し、右側が今の私たちです。スコアが大幅に良化したのが分かると思います。

この間、「最高の開発者体験」を合言葉に、実に様々な取り組みがされてきました。

などなど、数えればキリがありませんが、機能開発と並行して、様々なエンジニア達が前向きに開発者体験改善のムーブメントを作りあげてきてくれました。

またそれだけではなく、DX Criteria の「データ駆動」や「デザイン思考」についても大幅に改善が進んでいます。例えば「データ駆動」に関しては、データレイクの整備に加えて最近では専門のデータアナリストチームを立ち上げており、データマートを整備したり、事業の根幹となる KPI モデルの開発を行なえる体制が整ってきています。「デザイン思考」については 前 Quipper VPoD の鳥居 に入社してもらい、現在は UX リサーチの専門チームが出来ているだけでなく、会社全体にリサーチ文化が根付き始めています。デザインシステムの実装も、リアーキにあわせて着実に進んできています。

※ 最近ではユーザーインタビューも日常化しており、エンジニアやデザイナーだけでなく事業部のメンバーも積極的に参加しています。

なお、いくつかスコアが低い項目がありますが、例えば「ペルソナの設定」については、賛否あると思いますが我々は意図的にやっていません。最近では ペルソナは必ずしも作らなくて良い といった主張も目にすることが増えましたが、我々も同じように考えています。同様に「疎結合アーキテクチャ」についてはマイクロサービスを強く意識した項目になっていると感じますが、我々はマイクロサービスが必ずしも常に良い選択だと考えているわけではありません。私たちは現時点でエンジニア組織を大幅に拡大する予定はなく、筋肉質でリーンな体制を目指しているため、マイクロサービスを志向していません。これらの項目については、DX Criteria の評価項目自体がやや古くなってきている面もあるように感じます。

(とはいえ、現時点で残った最大の課題はバックエンドのアーキテクチャ改善なので、これは今後 2~3 年の大きなテーマになります)

目指すのは「多様な異能の共創」

まだまだ課題も残っていますが、3 年半で NewsPicks がここまで進化してきたのは、ひとえに沢山のタレントが活躍してくれたからです。私はいつも「自分の "心の KPI" はみんなのチャレンジ数」だと話していますが、この数年でメンバー起点のチャレンジは劇的に増えてきました。自らオーナーシップを持ち、やりきる力を持ったタレントがたくさん活躍してくれているのはとても心強く、引き続きこの文化は強化していきたいと考えています。

一方、組織の進化にあわせて、私の仕事も大きく変わってきています。一言でいえば、今の私の仕事の一つは「多様な異能の共創を促進する」こと。プロダクト開発組織が安定してきたため、今では私の仕事はプロダクト開発だけでなく、全社の組織を戦略に合わせてアラインさせるなどのマネジメント業務のほか、事業管理などビジネス側の仕事が増えてきています。この一年ほどは プロダクト開発をプロダクトチームに閉じたものにせず、全社の異能を結集できる体制 を目指し、大きく三つの取り組みを推進しています。

1. 全社組織の再編

従来さまざまな事業部に分散していた組織を集約・再編し、私自身も事業責任者として明確な責任を持てる形に変えました。

組織のミッションを明確にし、非効率な事業を整理し、一貫した戦略に沿って事業部/コンテンツクリエイター/プロダクト開発組織が連携できるようにしてきたことで、職能横断的な取り組みが大幅に増えてきています。調整コストも確実に減少しており、少しずつ目に見える成果が出始めてきていると感じています。

2. 多様な技術リーダーの輩出

私自身が徐々にプロダクト開発に閉じない職責を担うようになったのに伴い、プロダクト開発組織のリーダーシップも徐々に分権化を進めています。具体的には、以前ご紹介したプロダクトチームのビジョン に沿って次の方針を掲げています。

  • 多様なリーダーが、強みを活かして挑戦し続ける組織
  • 一人のリーダーよりも、多様なリーダーによって進化する組織
  • 挑戦し続ける組織が、最高の才能を惹きつける

この方針に従い、社内では「VP of X」と呼んでいる制度をつくりました。「プロダクト開発および開発組織全体にコミットしつつ、担当領域の未来をつくる専門家」を VP として任命する制度で、任命されたメンバーは役員と同等以上の報酬を支払えるようにしています。既に複数名これまでに活躍してくれていたメンバーを VP として任命しており、段階的にこれを 5 名以上に増やしていきたいと考えています。

3. リーダーシップの階層化

新たなリーダーを次々と輩出するためにも、リーダーの抜擢と成長支援が欠かせません。そのためにこれまでフラットだったエンジニア組織の階層を、一部階層化しました。「階層化」と書くとやや権威的に見えるかもしれませんが、組織の規模が大きくなっている中で、一定の階層化はむしろ成長支援の意味で有効だと考えています。既存のリーダーにはより大きな責任を持ってもらいつつ、メンバーには新たにリーダーとして活躍してもらう機会を提供できるようになるため、今後さらに新たなリーダーが生まれていくのを期待しています。

このように、新たな異能(技術リーダー)を生み出す仕組みをつくり、さらに全社の異能(異なる職能)が融合して大きなユーザー価値を生み出すプロダクト組織を少しずつ作っています。特にこの一年で、改めて 職能横断で価値を生み出す組織をつくる重要性 を再認識しています。

DX Criteria を超えて 〜 プロダクトエクセレンスを磨く

今の NewsPicks は DX Criteria の基準では最低限のレベルには達してきたのではないかと考えています。そろそろ私たちは次のレベルを目指していかなければなりません。そのための道標であり、私が現在参考にしているのが Productboard が提唱している「Product Excellence」です。

www.productboard.com

Product Excellence | Insights, strategy, execution

最新版では若干表現が変わっていますが、Product Excellence では次の三要素が重要だと唱えています。

  1. 深いユーザーインサイト
  2. (組織全体が戦略目標に基づいて連携するための)明確なプロダクト戦略
  3. (組織全員の行動をアラインさせるための)一貫したロードマップ

つまり深いユーザーインサイトに基づいて、(プロダクト開発組織だけでなく)組織全体が連携して共通の目標に向かっている状態をつくること。Product Excellence では、より短時間で・適切な機能を・適切な方法でユーザーに届けるために、会社としてのこれらのケイパビリティを高める重要性を説いています。

NewsPicks では、これまで述べてきたように少しずつ組織を変えてきていますが、これらの活動は全て Product Excellence を高めるためでもあります。単に開発が速くなるだけでは、ユーザーに価値は届きません。組織全体が連携し、ユーザーに価値を届けるための運動論を作っていくのが重要になります。DX Criteria の測定結果を見ても分かるとおり、開発組織としての成熟度が高まってきている今、次はプロダクト開発組織だけでなく会社全体で「プロダクトエクセレンスカンパニー」を目指すステージに来た と考えています。

幸い、Product Excellence では次のように全社の Product Excellence を測定する簡易な診断表があります。

これを見ると、まだまだ私たちは Stage 3 ~ 4 のあたりに止まっています。プロダクトマネジメントの体制も強化していますが、これから先はもっと全社レベルの取り組みが重要になってくると考えています。

最後に

以上、NewsPicks プロダクト開発組織の現在地を、DX Criteria の結果とあわせてお届けしてきました。 引き続き「最高の開発者体験」の実現に尽力しつつ、全社としては「プロダクトエクセレンスカンパニー」を目指して頑張っていきます 💪

もし NewsPicks でエンジニアとして働くことにご興味をお持ちの方がいらっしゃったら、ぜひこちらのページから応募いただけると嬉しいです 😊

tech.newspicks.com

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