ペアプロと育休の取得しやすさの関係について

こんにちは。SPEEDA開発チームの鈴木です。

昨年一児(娘)の父になりまして、凄い勢いで変化していく様子に喜んだり困ったりしながら過ごしております。
色々できることが増えると嬉しいのですが、それは同時にいたずらの幅が広がることも意味するんですよね。例えばものを引っ張ることを覚えたのは嬉しいのですが、私の髪の毛をひっぱってむしるのはやめていただきたい。そんな感じです。

髪をむしる娘の図。言葉は通じない。

今回はそんなうちの子が産まれたときに取得した育休の話をしたいと思います。
育休の話とはいっても育休をハックする話とか育児アプリとかの話ではなく、「育休を取得しやすい(と私は思う)SPEEDA開発チームの環境」についての話をします。
本編がそこそこ長い(スミマセン)ので前置きはここら辺で切り上げることとします。

男性の育休取得率

さて突然ですが、2018年度の日本における男性の育休取得率がどのくらいかご存知でしょうか?

6.16%です。

これは過去最高の取得率だそうです。
ちなみに同年の女性の育休取得率が82.2%だそうなので、過去最高とはいえども残念ながらまだまだ低い数値といえるのではないでしょうか。

このような状況の育休ですが、SPEEDA開発チームでは昨年私を含めた2人が育休を取得しています。
母数が少ないので一概に「育休取得率が高い」とは言えないですが、間違いなく育休を取得しやすい環境であると思いますし、だからこそ私は育休を取得したので、今回は私たちの環境の紹介を兼ねて次のような話をしようと思います。

1. 男性が育休を取得しなかった理由  
2.「1」の理由の原因を考える
3.「2」の原因を解決するにはどうしたらいいか  
4. SPEEDA開発チームにおいてはどうしているか  

男性が育休を取らなかった理由

では、まず一般的にどういう理由で育休が取られていないのか、2018年度のデータを見てみましょう。

育休を取得しなかった理由2018

これを見ると、男性が一体どういう理由で育休を取得しなかったかがわかります。
(出展: 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業」)

Top3はこのようになっています。

1位: 業務が繁忙で職場の人手が不足していた(38.5%)
2位: 職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった(33.7%)
3位: 自分にしかできない仕事や担当している仕事があった(22.1%)

今回はこのうち2位の「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」と3位の「自分にしかできない仕事や担当している仕事があった」にフォーカスして話を展開したいと思います(人手不足の話は採用や業務効率化に絡んだ話だと思いますが、そこについては別軸の問題だと思いますので今回は言及しません)。

育休を取らなかった理由の原因を考えてみる

次に、上記2つの理由について私なりに原因を考えてみたいと思います。

職場が育休を取得しづらい雰囲気になっている原因

なぜ育休を取得しづらい雰囲気になってしまっているのでしょうか。
原因を私なりに考えてみましたが、このようなことが考えられるのではないかと思います。

1.普通の休暇すら取りづらい
普通に1日2日の休暇を取ることが難しい環境の場合、ある程度まとまった期間になるであろう育休は余計取りづらく感じることかと思います。
どういう場合に休暇が取りづらくなるのか、2つ思い当たります。
1つ目は、自分が担当している仕事に期限があり、休むことで間に合わなくなったり、後々辛くなったりと自分が困るケースです。
2つ目は、自分が休むと自分の仕事を周囲の誰かが余分に担当することになり、迷惑がかかるケースです。
1つ目のケースで休んだ分を自分でカバーできずに間に合わなくなった場合は、2つ目のように他の誰かがフォローにまわり結局周囲の負荷が増えることが考えられます。
そういうことを考えていくとやはり休みづらくなるのではないでしょうか。
また、こういった懸念は想像に過ぎず実際は自分が休んだところで大した迷惑はかからないのかもしれませんが「安心して休める仕組み」が整っていなければ心理的に休みが取りづらいということはあるでしょう。

2.周りの人が普通の休暇すら取らない
自分だけではなく、周りの人も「1」と同じように自分が困ったり、周囲への迷惑を気にして休みを取得しないような環境では休みづらくなるかと思います。
お互いをお互いで縛り合っている感じです。同調バイアスによる負の連鎖と言えるかもしれません。
休暇と同様に、子供が産まれたのに誰も育休を取得しないような環境では遠慮してしまう(遠慮しなければならない気持ちになる)のではないでしょうか。

3.男性の育休に理解がない
周りの人たちが男性の育休に対して理解がない場合、育休は取得しづらい雰囲気になるでしょう。

どうすれば育休を取得しやすい環境になるか

私が挙げた原因はどれも環境が原因となっていますが、どうしたら育休を取得しやすい雰囲気を作れるでしょうか。
「1」は色々な解決方法があるでしょうが、上述のとおり休んだ場合に自分を含めて誰も困らないような「安心して休める仕組み」があれば解決しそうです。
「2」の解決には「1」の仕組みの存在に加えて実際その仕組みが働いている必要があります。
「3」は「1」の仕組みで部分的に解決しそうです。なぜなら「3」のような人たちが育休に反対する理由は”育休を取得することによって自分や他の人たちに迷惑がかかる”ということにあったりするからです。
「誰かが迷惑するから育休には反対」とは言えても「誰にも迷惑はかからないが育休には反対」とは言えないのではないでしょうか。

このように考えてみると 「安心して休める仕組み」が存在して運用されていることが、育休を取得しづらい雰囲気を解消する方法の一つになりそうです。

安心して休める仕組みとは

休みを取得しづらい理由として「休むと自分が困る」というものがありました。
なぜ自分が休むと困る状況になっているのでしょうか。それは「仕事が個人に対してアサインされている」からではないでしょうか。
そもそも自分がやらないといけない仕事なので、誰かに代わってもらいづらいというわけです。
このような環境では他の人も同様に「自分の仕事」をもっているでしょうから。
では「仕事がチーム対してアサインされている」ならば問題はないのでしょうか。
いいえ。 チームで仕事をしていても、仕事が属人化しないようにしないと今回の文脈では結局困ることになります。
仕事が属人化していると、計画的に休む場合は引き継ぎが発生するでしょうし、突発的に休むなら引き継げない分を自力で調査したりする手間が発生するからです。
ですので「仕事がチームに対してアサイン」されており、属人化も防がれていなければなりません。

SPEEDAの開発チームではどうしているか

SPEEDAの開発チームでは基本的に「仕事はチームに対してアサイン」されます。
そして「ペアプロ」が属人化を防ぐのに役立っています(やっと本題!)。
(属人化を防ぐためだけにペアプロをしているわけではないことを補足しておきます。ペアプロには属人化の軽減以外にも沢山のメリットがあるんです。ただ今回の話では「属人化」の観点にフォーカスします。)

ペアプロについて具体的に

SPEEDAの開発チームは、すべてのチームがほぼ100%ペアプロで作業しています(ペアプロそのものについての詳しい説明は割愛させていただきます) 。
そしてプログラミング以外(例えば採用活動)でもペア作業をします。
更にペアを組むメンバーを一日のうち何度も入れ替えており、様々なメンバーと様々な開発ストーリーに取り組むことになります。
領域もUI/UX含めたフロント周りから、バックエンド、インフラ、CI/CDなどすべてを皆で担当します。
その結果として、チームの中で「フロント部分はAさんしか知らない」「バックエンド部分はBさんしか知らない」という属人化が起きなくなっています。

チームの人数が多く、かつ小規模なストーリーの場合、自分が担当する前にストーリーが終わってたということはありますが、自分しか知らないという状況にはなりません。
またチームの人数が奇数の場合は一人作業※が発生しますが、その場合は一人でも十分なストーリーを選ぶような工夫をしています。 ※一人で作業するというのは普通かもしれませんが私たちの場合ペアが基本なため一人は特別な感じです。
そのため、誰かが休んで困るということが基本的にありません。
なので用事があれば休みますし、周りがそうなので上述のように「周りが休まないから休みづらい」ということがありません。

ペア作業のイメージ

ここで補足としてペア作業についてイメージしやすいように絵で表してみることにします。
あるチームにメンバーとして、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんがいるとします。

ペアは、AさんとBさん、CさんとDさんという組み合わせとします。
環境はこのような感じです。

ペアプロ環境

一つのデスクトップPCにモニター2つとキーボード2つが接続されています。
マウスが見当たらないのは画像の手抜きではなく、Thinkpadのトラックポイント付きキーボードを使っているためです。
各々に対してキーボードが存在するため、ドライバーとナビゲーターの役割がスムーズに交代できます(キーボードが一つしかなかったら、心理的にキーボードを渡してもらったり渡したりというのがやりづらくなるかと思います)。
モニターはミラーリングされていたり左右で分割されていたり、ペアによってやりやすいように変えています。

CさんDさんペアも同じ構成で作業します。

作業の流れ

時間は13時、AさんとBさんペアはストーリーXに着手します。CさんとDさんペアはストーリーYに着手します。

時間が14時になりました。ここでペアを入れ替えます。1コマの時間(ペア交代までの時間)は、チームで話し合って決めます。この例では1時間で交代するものとします。今度はDさんAさんペア、BさんCさんがペアになりました。横にスライドする形ですね。

入れ替えの際は、作業開始時にいまどういう状況なのかの共有が行われることが多いです。
(省いていますが、本当は適宜休憩を入れます(休憩超大事!))
また、OSやディレクトリ構成などは意図的に統一しているため、別のマシンに使ったとき困りません。

時間が15時になりました。またペアを入れ替えます。CさんDさんペアと、AさんBさんペアです。

これで全員がストーリーX、ストーリーY両方に少しずつ関わったことになり、特定のメンバーしかわからないということがなくなりました。
複数のストーリーに少しずつ関わるということは、一つのストーリーに100%関われないことも同時に意味し、自分の知らないコードが存在し得るようになります。
こういった問題に対しては、他のメンバーに伝えた方がよさそうなことについて(例えば設計の部分)は都度々々共有したり相談したりしながら進めることで対応しています。
メンバーが増えていくとこういった共有も大変になってきたり、上記のペアの入れ替え方法だとペアを組めない人たち(例えばAさんとCさんはペアになれない)が出てきたりと、ペア作業については話題が尽きないのですが、今回の趣旨はペア作業によって属人化が軽減されているということであるため割愛させていただきます。

チームの入れ替え

チーム内でペアの入れ替えを行っていることは上述しましたが、チームをまたいだメンバーの入れ替えも行われています。
例えばXチームとYチームという2つのチームがあったとします。 このチームに対し、それぞれが担当している仕事はそのままに、メンバーを一部入れ替えるのです。

↑を↓のように入れ替える。


入れ替えの頻度は決まっておらず、リソース調整の結果であったり、タイミング的なものであったりします。
また、基本的には本人の意思が最大限に尊重され本人が希望するチームに移動することになります。強い理由があって同じチームに長く残るということもあります。
このような入れ替えが行われることにより、SPEEDAの開発チームにおける属人性は極めて少なくなっているといってもよいかと思います。
※ペアプロと同様に属人化を防ぐためだけに入れ替えをしているわけではなく、知見の共有であったりチームに新たな風を起こしたりと他にも色々メリットがあるから入れ替えが行われています。

最後に

私がSPEEDA開発チームにおいて、育休を取得しづらいとは思わなかった理由は、ユーザベースという会社自体も周りの人たちも男性の育休に理解があったということもありますが、ペアプロとチームの入れ替えによって「属人化」が軽減されており「自分が休むと誰かが困る」という心理的負担がなかったことも大きいと思います。
今回は主に「属人化」という点にフォーカスしてペアプロの話をしましたが、ペアプロがもたらす良い作用は他にも沢山あるので、(いきなりは難しいかもしれませんが)興味がわいた方は是非ペアプロを取り入れてみてはいかがでしょうか。
いきなりガッツリではなく、小規模に始めたり、短時間やってみたりするだけでも「良さ」がわかるかもしれません。

Page top